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宮里藍は松井秀喜を見ていた――。
日本を背負い戦った女性の肖像。
posted2017/09/28 08:00
text by
南しずかShizuka Minami
photograph by
Shizuka Minami
エビアン選手権最終日の14番ティーグラウンド、宮里藍は前の組のプレーを待つ間に、同組のイ・ミヒャン(韓国)と言葉を交わしていた。
宮里は、会話の合間にクルッと振り向いて、1歩下がったところにいたもう1人の同組のチェ・へジン(韓国)に声をかけた。
「(韓国から)家族は来てるの?」
英語が苦手なのか、シャイな性格なのか、18歳のプロになったばかりのヘジンは小さな声で「ノー」と答える。宮里が「1人で来てるの? すごいね」など続けて言葉をかける。
ヘジンは、はにかんだような笑顔で頷く。
言葉数は少なくとも、ヘジンは宮里に話しかけられて嬉しそうだった。
何気ない会話だが、宮里藍らしい瞬間であった。
いつも誰でも別け隔てなく明朗に接してくれた。
ゴルフは個人スポーツなので、他の選手と会話しなくても試合に支障はない。むしろ、寡黙に自分のプレーに集中している選手の方が多い。だが、宮里は、年齢が一回り以上違うアジアの後輩に躊躇することなく話しかけた。一緒にラウンドするのは初めてだったにもかかわらず。
いつでも宮里は、自ら挨拶をし、はっきりした声で喋り、相手の話に耳を傾けた。
メディアにも同様に真摯に対応した。
顔見知りも、初めてゴルフ取材に来たメディアも区別することなく、きちっと挨拶を交わした。
「今日の調子は?」
「今週の目標は?」
「コースの印象は?」
毎週、毎日、すべての大会で繰り返される平凡な質問にも、嫌な顔ひとつせず、ハキハキした声で丁寧に答え続けてくれた。