“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2名岐ダービー伝説、パート2。
史上初、前売り完売の奇跡と……。
posted2017/10/03 11:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「やっぱりこれが本物のダービーマッチだよね!」
J2第35節のFC岐阜vs.名古屋グランパスの通称「名岐ダービー」直前。岐阜出身である筆者は、故郷の友人のひとりと興奮しながらそんな会話をかわしていた。
今年2度目の名岐ダービー。
岐阜にとって、カターレ富山との「東海北陸ダービー」、富山と松本山雅との3クラブ合同の「TOP OF 北アルプス」、ツエーゲン金沢との「白山ダービー」などなど……これまでFC岐阜がかかわる試合で「ダービーマッチ」と名付けたものは複数あったが、どれも岐阜にとって「本物のダービー」ではなく、申し訳ないがどこか商業的な匂いがしていた。極端に言えばチケット販売のために営業面から強引にダービーに祭り上げてきたようなものに見えた。
だが、名古屋が相手となると話が違う。
名古屋駅と岐阜駅はJRの東海道線の新快速を使えば、僅か18分。各駅停車でも25分程度と、隣接している。それゆえに岐阜はあらゆる面で名古屋と密接な関係にあり、それは対等というよりも、名古屋に従属するような立ち位置だった。
ゆえに長年“名古屋の植民地”(あくまでも筆者の認識する感覚ですが!)として、揶揄されてきた岐阜にとって、名岐ダービーこそ「正真正銘のダービー」であり、岐阜のアイデンティティーをアピールする本当に重要な一戦となったのだ。
だがこの名岐ダービー、岐阜側にとっては「絶対に勝ちたい一戦」だが、名古屋にとっては正直、ダービーマッチと思われていない。ある名古屋のサポーター曰く、「名古屋がJ2に落ちたから偶然実現したに過ぎない一戦」というほど、扱いの軽いものだった……。
岐阜サポーターは熱く、名古屋サポーターは平常心。
名古屋のホームである豊田スタジアムで2017年3月4日に行われた名岐ダービー第1ラウンド(J2第2節)はその色が濃く出た。鼻息荒くモチベーションを高めた岐阜サポーターに対し、名古屋サポーターは至って平常――その温度差がまた岐阜側にとっては、このダービーを挑戦しがいのあるイベントにしていたのだ。
そして迎えた10月1日、J2第35節となった第2ラウンド。場所はFC岐阜のホーム・岐阜メモリアルセンター長良川競技場。
この一戦は第1ラウンドとは全く雰囲気が違った。