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「リャンの生き様そのものが仙台」
ベガルタの象徴、梁勇基という男。
posted2017/10/03 08:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
ベガルタ仙台はルヴァン杯の準々決勝で強敵の鹿島アントラーズを退け、10月4日、8日にはクラブ史上初となる準決勝の舞台に立つ。1999年にJリーグ加盟以降、J2で計9年過ごすなど、J1での歴史はまだ浅い。リーグ、カップ戦を含めていまだ無冠。念願のタイトル獲得への期待は、否がうえにも高まっている。
「クラブ史上初のベスト4と言ってもね……。優勝しないと、ベガルタの名前は歴史に残らへん。2位になっても、ほとんどの人は覚えてへんでしょ」
ベガルタ一筋14年目の梁勇基は、「プロサッカー選手として育ててくれたクラブへ恩返ししたい」と常々口にしており、タイトルへの思いは強い。喧騒の街、大阪で生まれ育ったが、のどかな仙台で4児の父となり「ここは第2の故郷」と柔和な表情を見せる。
5年前の経験が言わせる「盛り上がり過ぎたらあかん」。
2012年の冬。杜の都が熱気で包まれたことは、本人の胸に深く刻まれている。東日本大震災で甚大な被害を受けた翌年だった。仙台は「希望の光」という言葉を掲げ、シーズン終盤までサンフレッチェ広島と首位争いを繰り広げる。当時はクラブ、ファン・サポーターを含め、街の雰囲気も仙台の快進撃にふわふわしていたという。
「選手たちも浮き足立っていた」。優勝にあと一歩と迫りながらも、最終盤に残留争いをしていたアルビレックス新潟に足をすくわれて、夢は途絶えた。
「あの瞬間は、“なんでここで勝たれへんねん”と思ったけど、冷静に振り返ると、優勝するには力が足りなかった。俺自身もまだまだやったなって」
浮ついた空気は知らず知らずにロッカールームにも漂い、わずかな隙を生むことを身をもって経験した。だからこそ、いまは気を引き締めている。
「地に足をつけて、やることが大事。盛り上がり過ぎたらあかん。これが経験を伝えるということかな」