リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
レアル撃破ベティス、好調の秘訣。
新監督はクライフとチェスがお好き。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2017/09/30 09:00
日本でもサッカーと将棋は似ていると言われる。アンダルシアの地でセティエン監督はボードゲームの有効性を実践している。
強く影響を受けたのはクライフのバルサ。
しかし、セティエンはやってのけた。そればかりかクラブにとって19年ぶりの2部昇格を果たし、翌シーズンはあっさり残留を決めてルーゴが2部に根を下ろすきっかけを作った。オーナーが替わりクラブの方針が変わらなかったら、そのままチームの陣頭に立ち続け、いまごろクラブ史上初の1部昇格をも達成していたかもしれない。
ところで、ディフェンダーからパスを廻すスタイルといえばバルサだ。“ドリームチーム”のサッカーを実際にピッチの上で味わった世代として、セティエンもクライフの影響を強く受けている。
「バルサがあのスタイルを確立した後、対戦相手は90分間ボールを追い廻す羽目になった。で、わたしは『方法はわからないけれど、やりたいと思っていたサッカーはこれじゃないか?』と感じた。自陣から繋いでいくことや攻撃時の選手のポジショニング、ボールを奪われないための選手間のコミュニケーション、スペースを作るためのパス出しのタイミング……。ボールをキープするためにしなければならないことを、我々はクライフから学んでいる」
チェスの世界大会で代表になれるほどの腕前。
もうひとつ彼を特徴づけているのは、チェスの知識だ。
まだ幼いころ父親に教わり、最初はサッカーの合間になんとなくやっていたチェス。それが地元で優れたプレイヤーと知り合ったことではまり、チェスクラブに属した後は熱を上げる一方になったという。試合前夜であっても暗闇の中で目を覚まし、指し手を考えるほどだったとか。
ただし特別な才能があるわけではないことにも早くに気づき、サッカーのせいで上達に必要な時間を確保できないこともあって、プロになろうとは思わなかったそうだ。それでも'16年の世界大会チェスオリンピアードならば、51カ国で代表になれる2055というレイティングを記録している。