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レアル撃破ベティス、好調の秘訣。
新監督はクライフとチェスがお好き。
posted2017/09/30 09:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
AFLO
思いのほか、というと失礼になるだろうが、ベティスの調子がいい。
第5節には19年ぶりにサンティアゴ・ベルナベウでレアル・マドリーを破り、先の月曜日(第6節)はレバンテに4-0で快勝して5位に浮上した。まだ序盤ながら、ひと桁の中位まで順位を上げたのは7位でシーズンを終えた2012-13シーズン以来である。
好調のわけは選手のコンディションや補強の成功など幾つかあるが、最も重要なのは、やはり新任監督キケ・セティエンの存在だろう。
スペイン北部サンタンデールで生まれたセティエンは、現役時代は優れたテクニックを持つエレガントなMFとして名を馳せ、地元のラシンやアトレティコ、ログロニェス、そしてスペイン代表でもプレイした。
監督として国際的に知られるようになったのは 2015年10月にラスパルマスを率いるようになってからだが、スペイン国内で最初に注目されたのは'09年夏に始まったルーゴ時代だ。
「楽しんでいることをボールをもって表す」
その理由を説明する前に、いまや彼の看板となった痛快なパスサッカーをセティエンはなぜ好むのかを紹介しよう。今年4月スペインのウェブメディアが行ったインタビューで彼はこう語っている。
「選手の99%はボールを持って、ゴールを決めるのが好きだから――つまり楽しみたいからサッカーをやっているとわたしは常々思っている。なので自分のチームにはボールを持たせたいし、そのための仕組みを植えつけたい。選手が楽しみ、楽しんでいることをボールをもって表すことが大事なんだ」
いわゆるポゼッションサッカー。実践するには巧い選手が必要だ。少なくとも一般的にはそう思われている。
だから2部B(3部リーグにあたる)のルーゴをセティエンが引き受けたとき、サッカー界の有識者たちは「このカテゴリーの選手レベルじゃ無理。ディフェンスラインからボールを繋ぐスタイルなんて、とてもできない」と言い切った。