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ドラフトの人気はやはり即戦力投手?
中村・安田より「田嶋に集中するね」。
posted2017/09/21 17:00
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
Kyodo News
清宮幸太郎(早稲田実・一塁手)のプロ入り表明の行方が耳目を集めている最中、もし彼がプロという選択をしなかったら果たして他の誰が一番人気になるのだろうか……。
そんなことを思い始めたときに見たのが、第43回日本選手権大会・関東代表決定戦のSUBARU対JR東日本だった。先発はともに今年ドラフト解禁になる右腕・高橋史典(立正大→SUBARU)と左腕・田嶋大樹(佐野日大高→JR東日本)。
高橋は立正大時代に通算5勝しかしておらず、社会人入りしてから大きく成長した本格派だ。昨年秋の日本選手権では2回戦のパナソニック戦に先発し、敗れはしたが7回2/3を投げて被安打6、与四死球2、奪三振9という内容で強豪を苦しめ、このJR東日本戦でも好投している。
最速145キロのストレートにカーブ、スライダーを交え、小さく鋭く落ちるスプリットを勝負球にするのが主な組み立てで、7回2死一塁の場面で降板しているまで、失点・自責点はともに0。
テークバック時の沈み込んだ形が村田兆治(元ロッテ)を思わせ、この試合で与えた四死球は2つのデッドボールだけと、完成度も備えている。それほどの能力を持つ高橋でも、田嶋大樹と一緒に見ると印象が霞んでしまう。
凄まじいストレートに、緩急も忘れない。
田嶋はけっして優等生とは言えない投げ方をしている。フォームは横手に近いスリークォーターで、リリースに向かっているときにはすでに打者に正対している。つまり体の開きが早い。こういう投げ方をするピッチャーを高く評価したことはないが、田嶋は別格である。
ストレートは最速149キロを計測し、腕の振りがもの凄い。投げる前から速い球を投げるぞと息巻いているのがわかる腕の振りで、放たれたボールはホームベース上からホップするような勢いでキャッチャーミットに収まる。そしてこのストレートと同じ腕の振りで130キロ台後半のカットボールが投じられる。これが田嶋の最大の武器と言っていいだろう。
さらに横変化のスライダーをプラスマイナス10キロのスピード差で投げ分け、時折104、5キロのカーブも織り交ぜて緩急を作ることも忘れない。8回に死球と長打で1点取られたが、四球1、死球1、被安打3、奪三振8という内容で完投し、チームを2年ぶりの本選出場に導いている。