詳説日本野球研究BACK NUMBER
ドラフトの人気はやはり即戦力投手?
中村・安田より「田嶋に集中するね」。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2017/09/21 17:00
本格派の左投手はどの球団も喉から手が出るほどほしい。先発でもリリーフでも力を発揮する田嶋大樹は1位が確実視されている。
「田嶋に指名が集中しますね」というスカウトも。
試合が終わって帰り支度をしていると、日本ハムの大渕隆スカウト部長が私の前を通り抜け、「清宮がプロに来なかったら田嶋に指名が集中しますね」という言葉を残して出口に向かった。
清宮は確かに数年に1人のスラッガーだが、多くの球団が即戦力の先発タイプを必要としていることも確かで、それが150キロ超のストレートを備える本格派ならなおさらである。
今年のドラフト上位候補で即戦力の期待がかかるのは、大学生では馬場皐輔(仙台大)、鍬原拓也(中央大)、東克樹(立命館大)、社会人では永野将司(Honda)、鈴木博志(ヤマハ)、鈴木康平(日立製作所)、西村天裕(NTT東日本)あたりで、ストレートを前面に押し立てる本格派が多い。
つまり、田嶋ほど変化球に信頼を置けないので、即戦力投手を優先順位の筆頭に置く球団は田嶋の入札に向かう、という予想ができる。
「過去の人」になりかけていた投手も復活の兆し。
その5日後の東都大学2部リーグの試合では、「過去の人」になりかけているドラフト候補に注目した。専大松戸高から専修大に進学したアンダースロー、高橋礼である。2年春には2勝0敗の好成績を挙げ専修大の26年ぶり優勝の原動力になり、2年夏の第28回ユニバーシアード競技大会では日本代表として韓国戦、アメリカ戦に1イニングずつ登板し、被安打0、失点・自責点0に抑えている。その高橋が3年春以降、まったく精彩を欠くようになった。
3年春 防御率4.06、奪三振率5.28、与四死球率5.28
3年秋 防御率5.83、奪三振率4.91、与四死球率5.22
4年春 防御率7.58、奪三振率3.32、与四死球率5.68
ひと目見て、成績を低迷させる原因が制球難であることがわかる。それが9月19日の駒澤大戦は見違えるような出来だった。
7回裏、無死満塁のピンチでリリーフ登板すると8、9番打者をストレートで空振りの三振に取り、1番打者を一塁ゴロに打ち取っている。試合が行われた府中市民球場にはスピードガンが設置されておらず、どのくらいスピードが出ているのかわからないが、腕の振りから少し遅れてボールが出てくるのでストレートが異様に速く感じられる。
8回は2番打者をストレートで空振りの三振に取り、3番打者に四球を与えるが盗塁失敗で走者がいなくなり、4番打者をまたもやストレートで空振りの三振に取ってこの回も3者凡退で切り抜ける。
9回は2死を取ってから崩れて2点を失うという悪癖が顔を覗かせたが、「2年後のドラフト上位候補」と言われていた頃のキレが戻ってきたと言っていいだろう。
直曲球の比率は9回を参考にするとストレート7割、変化球3割。投球フォームこそ違うが、全盛期の杉内俊哉(巨人)を思い出した。