バレーボールPRESSBACK NUMBER
1年おきにボールが変わっては……。
バレー強化の意外な「落とし穴」。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2017/09/20 08:00
サーブを武器にする必要がある日本にとっては、国際大会と国内大会でボールが違うのは影響が大きいといえるだろう。
ボールが1年おきに行ったり来たりでは……。
ミカサとモルテンは共に日本バレーボール協会(JVA)やVリーグ機構のスポンサーで、1年ごとに男子、女子交互にそれぞれのボールが使用されてきた。昨年はVリーグの女子でモルテンのボールが使用されていたのだが、今年の全日本女子では、それに対する戸惑いの声が聞かれた。
昨年の代表ではミカサのボールでサーブを武器としていた選手が、Vリーグでモルテンのボールでプレーしている間に、ミカサのボールで打っていた感覚を失い、今年の全日本が始まった5月の段階では山なりの弱いサーブになっていた。9月のグラチャンの時点でも、まだ昨年のような鋭いフローターサーブは戻っていなかった。
同じことが毎年男子、女子と交互に繰り返されてきた。男女ともに日本にとってサーブは特に重要なプレーだ。本来は全日本と所属チームで1年を通じて同じボールで技を磨き、それを年々積み上げ、極めていくことが理想だ。しかし現在は1年おきに行ったり来たりを繰り返している。それは代表の強化にとっては大きなデメリットである。
「特に影響が大きいのはサーブとサーブレシーブ」
グラチャンの出場国の中では、フランスが国内リーグでモルテン製のボールを使用している。フランス代表のロラン・ティリ監督も、「国際大会とボールが違うことで、もちろん選手はプレーの違いに苦労する。特に影響が大きいのはサーブとサーブレシーブ」と言う。ただ、フランス代表は多くの選手が国外のリーグでプレーしているためさほど痛手にはなっていないとも話していた。
日本代表はほとんどの選手が国内でプレーしているため影響は無視できない。
この件について以前、日本協会の鳥羽賢二強化事業本部長に聞いたところ、「2012年ロンドン五輪で女子が銅メダルを獲った時は、直前までVリーグでモルテンを使っていた。『それでも獲れた』という人もいれば、『ミカサでやっていたら、メダルの色が違ったんじゃないか』という人もいます」と苦笑した。