バレーボールPRESSBACK NUMBER
1年おきにボールが変わっては……。
バレー強化の意外な「落とし穴」。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2017/09/20 08:00
サーブを武器にする必要がある日本にとっては、国際大会と国内大会でボールが違うのは影響が大きいといえるだろう。
海外の選手はオーバーハンドで取ってしまう。
そのサーブが世界トップのチームに通用するのかどうかがグラチャンでの1つの注目ポイントだったが、世界はさらに上を行っていた。
昨季V・プレミアリーグで、フローター陣の中ではトップのサーブランキング5位だった李は、グラチャン5試合でサービスエースは1本。大きく崩してブレイクにつなげる場面も多くなかった。
これまでは得意な対角線のコースに強いサーブを打てれば簡単に相手を崩すことができていた。しかしグラチャンではそうはいかなかったと李は言う。
「日本人選手のようにアンダーハンドでサーブレシーブしてくれたら、ボールが変化した時に弾いてくれるんですけど、海外の選手はオーバーハンドで取るので、安定していて、正面だと簡単には崩れてくれない。だから人と人の間を狙うとか、いろいろ考えていかなきゃいけないし、いつもなら崩せているようなサーブが返されて、変に『もっと攻めよう』と意識しすぎて空回りしてしまったところもありました」
藤井も「自分では結構いいサーブが打てたと思っても簡単に返される。単に強く打つだけじゃなく、しっかりコースも狙える正確性がなければこのレベルでは厳しい」
と、さらなるスキル向上の必要性を口にした。
Vリーグでは国際大会と違うメーカーのボールを使用。
来年の全日本のトレーニングが始まるまでの間は、個々が所属チームでサーブの精度アップに取り組まなければならない。
しかしここで問題がある。10月21日に開幕するVリーグの男子では、今シーズン、国際大会で使用されるミカサ製のボールではなく、モルテン製のボールが使用されるのだ。
ミカサのボールとモルテンのボールは見た目も特性も違う。特にジャンプフローターサーブの場合、ミカサのボールと同じようにモルテンのボールを打つと、伸びすぎてアウトになってしまったり、変化の仕方が異なる。そのためモルテンを使用するシーズンはモルテンに合った打ち方をしなければならない。極端に言えば、今シーズンのリーグ中にモルテンのボールでフローターサーブのテクニックを磨いても、来年の全日本には直結しなかったり、むしろ遠回りになる場合もある。