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人を動かし、時に自ら打つセッター。
冨永こよみは司令塔に定着するか。

posted2017/09/13 07:00

 
人を動かし、時に自ら打つセッター。冨永こよみは司令塔に定着するか。<Number Web> photograph by Kyodo News

冨永こよみ(10番)のポジティブな空気はチームを盛り立てている。セッターはチームの要だけに、競争の激化は喜ばしいことだ。

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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Kyodo News

 9月10日まで開催されたバレーボールのワールドグランドチャンピオンズカップ2017(グラチャン)女子大会で、日本は2勝3敗の5位に終わった。強豪ブラジル、韓国には勝利したが、ロシア、アメリカとの接戦を落とし、中国には力の差を見せつけられた。

 その中でも、今年初めてシーズンを通して全日本でトスを上げたセッターの冨永こよみの成長は収穫だった。

 冨永は高校時代、名門・下北沢成徳高のエースだったが、卒業後、Vリーグのパイオニアでセッターに転向。パイオニアの廃部を経て、上尾に移籍した。

 身長176cmは日本のセッターの中では長身だ。世界と戦うことを見据えての転向だったが、全日本では2009年のグラチャンに、当時の絶対的な司令塔・竹下佳江の控えとして出場したのみで、その後長らくチャンスは訪れなかった。今年はその時以来の国際大会出場となったが、コート内での振る舞いや表情は堂々としていて、何とも言えない包容力がある。

中田監督「たぶん私より負けず嫌い」

 全日本の中田久美監督は7月のワールドグランプリで、冨永を起用した理由を聞かれてこう答えた。

「修正能力が非常に高いし、あとは彼女の人間性。非常に落ち着いて見えるし、周りの選手に与える影響が、チームにとってプラスに働いている」

 冨永自身も「28歳という年齢もそうですし、怪我(アキレス腱断裂)もあったし、いろんな経験を積んでいるので、プレー以外の部分でもお手本になるようにと言われています」と語っていた。

 それと同時に、中田監督が「たぶん私より負けず嫌い」と言うほどの闘志を内に秘めている。

【次ページ】 アタッカーからセッターへの転向に潜む難しさ。

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