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FC今治新スタジアムはこだわり満載!
岡田オーナーは自分の足で確かめる。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshio Ninomiya
posted2017/09/17 08:00
最前列からピッチまでは手が届きそうな距離。岡田武史オーナーの夢がまたひとつ現実のものとなった。
翌日締め切りのPR紙を、総力で間に合わせる豪腕。
心震える感動、心躍るワクワク感、心温まる絆。
このスタジアムビジョンを、一枚の紙でどう表現すればいいか。
岡田はスタッフと一緒に考え、当日に行なうすべてのイベントをイラストで盛り込むアイデアを思いついた。イメージは「ウォーリーをさがせ!」だった。
「スタンドにはバーベキューシートがあって、店が立ち並ぶ駐車場はワイワイガヤガヤとしている。ピッチではドローンがボールを持ってきて、ラモスや友近さんがいる」
アイデアを伝えると、スタッフの顔が浮かない。締め切りは翌日の夕方だと言うのだ。
岡田は急いで親交のあるイノベーションプロデューサーの佐宗邦威氏にアポイントを取り、無理を承知で頼み込んだ。わずか1日で完成させ「サッカーに興味がない市民の方も手に取ってくれるんじゃないか」という手応えのPR紙ができたのだった。
やれることはすべてやる。10日に懸ける生半可ではない思いを、身をもって伝えたかった。
一見の価値がある、こだわりと手づくり。
航海に出たFC今治は、荒波にもまれることになる。
J3に昇格するには競技成績において年間順位で4位以内かつ、Jリーグ百年構想クラブで上位2チームに入らなければならない。JFLは2ステージ制を採用しているため、セカンドステージを取れば自動的に2位以内を確定させることができる。ただ、現在セカンドステージで首位まで勝ち点4差の4位、年間順位で4位まで勝ち点5差の6位。残り8試合と考えれば、1試合も落とせない状況ではある。
そして、参入の条件のひとつ「ホームゲーム平均入場者数2000人以上」のノルマもクリアしなければならない。残り5試合で約1万4000人を集める必要がある(そのうち夢スタは4試合)。スタジアムが完成するまで、FC今治の知名度を広げる意味をこめて尾道、福山、西条、四国中央など瀬戸内各地を回り、ホームグラウンドとしてきた。集客は厳しい状況ではあったものの、目先ではなく、将来を見据えての戦略である。
試合後、岡田の額には汗がにじんでいた。
「きょうはまだまだサッカーで喜んでもらえる質じゃないけど、少しは笑顔で帰っていただけたのかなと。でもまだ最後、お客さんが階段から転ばないかとか、そういう心配がいろいろとあるんだけど」
目を配り、心を配り、夢を配る。
規模は小さいが、野望は大きい。
こだわりと手づくりのフットボールパークには、一見の価値がある。