球体とリズムBACK NUMBER
クライファート愛弟子に横浜で直撃。
マルティノス、Jリーグってどう?
posted2017/09/16 07:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
マルク・オーフェルマルスやアリエン・ロッベンといった名ウイングを輩出してきたオランダ。そこで育ったサイドアタッカーがJリーグにもいる。
横浜F・マリノスで2年目のシーズンを送るクエンテン・マルティノスだ。
キュラソー出身の通称“マルちゃん”は、生後8カ月で家族とともにオランダ北部のレーワルデンへ移住し、幼少期はストリートで技術を磨いた。そして、U-16からU-18まではオランイェ(オランダ代表の愛称)の一員でもあった。
ピッチ上では独特の間合いの仕掛けで異彩を放ち、ピッチ外では気さくなキャラクターと笑顔で人気を集める26歳は、オランダからハンガリー、ルーマニアを経由して横浜にやってきた。そんな経験を持つ彼に、訊きたいことはたくさんある。日産フィールド小机に真夏が戻ってきたような9月中旬のある日、灼熱の太陽の下で鋭いシュートを何度もコーナーに撃ち込んでいたマルちゃんを訪ねた。
ルーマニアでは無給のまま半年とか本当にあったんだ。
──先週末の試合(川崎フロンターレ戦:0-3の敗北)は残念だったけど、気持ちは切り替えられているようだね。最後のシュート練習は圧巻だった。
「もちろん、フットボールでは常に勝利を収められるわけではないからね。僕自身はコンディションもいいし、次の大事な試合に向けてしっかり準備するだけさ」
──個人的に君のキャリアに興味があるんだけど、まずはルーマニアから日本に来た経緯を教えてくれるかな。
「ボトシャニというクラブでプレーしていたんだけど、あまり環境がよくなくてね。ヨーロッパリーグにも出場するようなクラブなのに、選手に給料が払われなかったり。日本人には想像できないかもしれないけど、本当の話なんだ。『今はお金がないから、来月まで待ってほしい』とスタッフに言われて、来月が再来月になり、気がつけば無給のまま半年が経っていた。最後にすべて払ってもらったから、僕はラッキーだったけどね。またそんな時に、マリノスに誘ってもらったんだから、僕は本当に幸運の持ち主だよ」