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FC今治新スタジアムはこだわり満載!
岡田オーナーは自分の足で確かめる。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshio Ninomiya
posted2017/09/17 08:00
最前列からピッチまでは手が届きそうな距離。岡田武史オーナーの夢がまたひとつ現実のものとなった。
こけら落としで“度肝を抜こうぜ”。
こけら落としに懸けていた。
「水軍の末裔が世界の大海原に出ていくぞというブランディング。俺はスタッフのみんなに“10日は度肝を抜こうぜ”と言ってきた。“お願いします、チケットを買ってください”だけでは今後、5000枚のチケットは売れないから。単にお披露目とか、そんな軽いもんじゃない。満杯にして、なおかつ“また来たい”と思っていただく。それこそ勝負なんだ」
監督時代と同じく細部までこだわった。
海賊のイメージか、スタッフは黄色の帽子、青のチョッキとおそろいの格好に統一。スタジアム下の広場はグルメあり、子供が遊べる遊具あり、特設ステージ(クリスタル・ケイがミニコンサートを披露)ありと、お祭りの雰囲気を出したいと願った。
自分で歩いたからこそ、気づいたこと。
観客席の一部にはバーベキューシートをつくった。区切りをどうしたら良いかも、図面で確認するのではなく、岡田は自らスタジアムに足を運んで実際にそこに座ってみてから、自分の見解を伝えている。トイレまでの導線もそうだ。
「自分で歩いたり、見たりして確認することが大事。思い込みで物事を進めてしまうと、ミスを犯しかねないから」
そう言って彼は一つひとつを、確かめてきた。
駐車場からスタジアムに上がる階段が急勾配になっており、試合当日、ボランティアスタッフは「上り下りには十分気をつけてください。時間に余裕のある方はスロープを使ってください」と声を張って呼び掛けていた。これも見て、歩いてきたから、徹底させたことであろう。
こけら落としの準備において、岡田から聞いたエピソードがある。
今治市の厚意によって、市の広報紙にこけら落としのPR紙を挟ませてもらえることになったという。スタッフがつくったのは、写真と日程だけが書かれているシンプルなものだった。岡田は言った。「これじゃ、せっかくのチャンスを活かせない。もうちょっと考えようぜ」と。