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NBA新シーズンを前に大型トレード。
カイリーが東京で明るかった理由。
text by
長澤壮太郎Sotaro Nagasawa
photograph byBrian Babineau/NBAE via Getty Images
posted2017/09/05 11:00
9月1日、ボストン・セルティックスの新入団選手会見で。カイリー・アービング(左)とユタ・ジャズから移籍したゴードン・ヘイワード。
「もっとリーダー格になるの?」「そうだね」
このように一連の報道を追っても、実際に私が感じたトレード要求の“意外さ”は払拭できなかった。
カイリーには、球団に不満がありトレードを要求している選手の持つ空気を感じなかったからだ。
東京での私のインタビューで、彼は「みんなから今までにもらってきた愛情をこれから返していきたいし、その準備ができた。25歳でこれから全盛期を迎える自分が、リーダーとしてどこまで行けるのかワクワクしているし、新しい世代を引っ張って行きたい」と言った。
「これからはもっとリーダー格になるの?」と聞くと「そうだね」と答えた。その時はてっきりキャブス内のことかと思っていた。
しかし、セルティックスの入団会見の場でも同じような内容を語ったのですぐにリンクした。チーム内にある不満などが原因ではなかったのだ。彼はあの時、既に違うチームのリーダーになる気持ちに切り替わっていたのだということも分かった。だからあんなに喜びに満ちた雰囲気を醸し出していたのかと。
NBA大学レブロン課程を卒業したのかもしれない。
カイリーは、マイアミでパット・ライリーのもと4年間帝王学を学んで帰ってきたレブロンと、3年連続ファイナルへ出場し、優勝も経験した。カイリーは、レブロンから、コート上、コート外にかかわらず、その帝王学を学び取ったのだ。
「準備ができた」と語ってくれたカイリーは、NBA大学レブロン課程を卒業したのかもしれない。
レブロンも「3年間素晴らしいタッグだった」と優しいコメントで彼を送り出した。カイリーも入団会見で、「選手同士は皆、大きな家族だって分かっている」と言った。
周りが騒ぎ立てた、レブロンとの問題は原因ではなかった。カイリーはあくまでも自分の成長のために新たなる一歩を踏み出したのだ。
そして、彼がトレード先にあげたのは指導者とフロントに定評があるチームばかり。グレン・ポポビッチ、パット・ライリー、トム・ティボドー。ワンマン経営を続けるキャブスのオーナー、ギルバートに宛てた彼からのメッセージだったとも言える。
卒業を胸に、晴れやかな気持ちでセルティックス入りをしたカイリー、名門球団に新たな輝かしい歴史をもたらしてほしい。