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ヘッドスライディングは自己満足か。
甲子園の「最後まで諦めない」の姿。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2017/09/01 11:00

ヘッドスライディングは自己満足か。甲子園の「最後まで諦めない」の姿。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

プロ野球やメジャーでヘッドスライディングを目にするケースはほぼない。甲子園の風物詩といえばその通りだが……。

イチローは「俺のいちばん嫌いなこと」と説教。

 かつて、こんなこともあった。

 '07年の北京五輪予選の台湾戦で、ソフトバンクの川崎宗則がチームを鼓舞しようと平凡なショートゴロで一塁へヘッドスライディングし、師匠と仰ぐイチローから「カッコ悪い。俺のいちばん嫌いなことをした」と説教を食らった。

 一塁ベースまでの到達時間は駆け抜けた方が速いと言われているし、足でベースを踏んだ方が審判も見やすい。さらにヘッドスライディングは、ケガのリスクも高まる。そのため、イチローは非合理的で、プロらしからぬプレーだと切って捨てたのだ。

 今大会、頻度としてはやはり最終回、負けている側のチームがヘッドスライディングを試みることが圧倒的に多かった。そして私が見た中で、セーフになったケースは一度もなかった。

 ヘッドスライディングをしたくなる気持ちは、わからないでもない。彼らも駆け抜けた方が速いということは、百も承知なのだ。しようと思ってしているのではなく、後がない状況で、何とかセーフになろうと懸命になるあまり、ベースが見えた瞬間、思わず飛び込んでしまうのだ。それだけにケガも多い。

ヘッドスライディングを我慢する、ということもある。

 もっとも目立ったのは、福島から11年連続で出場した聖光学院だった。準優勝した広陵に3回戦で敗れたのだが、9回裏に3つの内野ゴロを打ち、いずれの打者も一塁へヘッドスライディングを試みた。8回裏の最後の打者もヘッドスライディングしたので、4連続ヘッドスライディングで締めくくったことになる。

 ヘッドスライディングは、言ってみれば、聖光学院の代名詞のようなものだ。これまでだったら、聖光学院らしいなと、どこかでその姿を讃えていたような気がする。

 しかし今年は、こうも思った。あの場面、ほんの少し冷静になって一塁ベースを駆け抜けることができれば、ひょっとしたら、ひとつくらいはセーフになっていたかもしれない。そして、そこから突破口が開けたかもしれない、と。

 無論、それはあくまでも仮定であり、推測の話だ。ただ、窮地に追い込まれてもヘッドスライディングを我慢できるチームは、いわゆる高校野球的な風景とは違う眺めの中で、彼らなりに最後まであきらめずに戦っているように映った。

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