酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
甲子園勝利数・日本地図を大公開。
王国は大阪と兵庫、豪雪地帯は……。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2017/09/01 07:00
各都道府県の春・夏合わせた勝利数の日本地図。それぞれの勝利数が、甲子園の歴史を築き上げてきた。
豪雪地帯、過疎の進む地方は苦戦気味?
50勝から99勝は、宮城県、沖縄県、栃木県、鹿児島県、福井県、長野県、茨城県、大分県、宮崎県、山梨県、長崎県、青森県、三重県、鳥取県、秋田県、岩手県、石川県。豪雪地帯や、過疎が進む地方が多い。
また栃木、茨城、三重などは、隣県の強豪校に選手が流出する傾向があるようだ。こんな中で1958年に初めて参加し、本土復帰後の1975年から毎年代表を送り込んでいる沖縄県は、今夏も出場した興南が2010年に春夏連覇するなど、躍進著しい。
50勝未満はというと滋賀県、佐賀県、福島県、島根県、山形県、富山県、新潟県の7県である。
やはりというか、豪雪地帯と過疎が進む地域が多い。7県のうち6県は優勝校を出していないが、佐賀県は1994年夏に佐賀商、2007年に佐賀北が優勝している。ともに県立校と言うこともあり、高校野球ファンに強烈な印象を残した。
通算31勝の新潟だが、ここ近年は日本文理などが躍進。
そして甲子園での勝利数が最も少ないのは、通算31勝の新潟県である。
新潟は知っての通り全国一の豪雪地帯であり、野球をする環境としては厳しかった。
そもそも新潟県単独で代表を出すようになったのは1974年から。それまでは北陸代表、甲信越代表、北越代表として他県との試合を勝ち抜かなくてはならず、1927年から1957年まで31年連続で地方大会で敗退するなど、甲子園にはめったに出場できなかった。
しかし2009年には日本文理が決勝に進出するなど、ここ近年は健闘している。
雪こそ降れど、新潟は野球大好き県だ。早起き野球が盛んで、野球独立リーグのBCリーグでは随一の人気チーム新潟アルビレックスBCもある。野球漫画の大家、水島新司もこの県出身だけに、今後の躍進に期待したいところだ。
こうして高校野球日本地図を見ていくと、野球は社会の動きと連動していることがわかる。過疎の問題、地域格差の問題が高校野球の勝利数からも浮かび上がってくる。
当コラムは「酒の肴」になる話題をご提供することを専らにしているが、酒席で小難しい話になるのも、ままあることではある。
この地図を見ながら、侃々諤々やっていただいても良いかと思っている。ご同輩。