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トップ下回帰でのデビュー戦ゴール。
本田圭佑、ミランでの轍は踏まない。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAFLO
posted2017/08/26 07:00
本田圭佑はやはりトップ下でこそ最大の能力を発揮する選手だ。日本代表での起用法も今後注目だ。
中央で味方を使い、点を取るのが本来の姿。
これまでミランでも、彼は多くの監督と時に忌憚なく、胸襟を開いて話してきた。それでも、イタリアで染み付いた「本田=サイド」という偏ったプレーイメージを払拭することはできなかった。
思わずこう考えてしまう。やはり何でも、「始まりは肝心」なのかもしれない。
サッスオーロであのシュートが決まっていれば、そしてアッレグリが解任されていなければ、ついそんな言葉が浮かんでしまう。
当然、サッカーは勝負の世界、タラレバがないことは承知している。それでも、人間ならどこかで苦い過去を“経験”という少し前向きな物に置き換えて、噛みしめる時があっていい。
ミランでの教訓をもとに新天地でスタートを切った本田は、アロンソ監督に対して強烈に「MF・本田」の印象を植え付けようとしている。彼はそれが自身の成功に直結すると確信している。ロシアW杯に向けて、再度本職で勝負することも明言している。中央を起点にパスも出せば、味方も使い、そして今回のように点も取る。それこそが本田圭佑という選手の、オリジナルな姿だ。
ミランでの失敗を、メキシコでは繰り返さない。
思えば2010年初めに移籍したCSKAモスクワでも、リーグ戦初出場の試合で決勝点を挙げている。これは決して、本田のミランでの日々を哀れみ悔やむための記事ではない。ただ、今回パチューカでのデビュー戦で挙げたゴールと、ミランでのデビュー戦で決められなかったあのシュートが重なったのである。それはともに、同じ利き足の左足を振り抜いたミドルでもあった。
サッカーは実力の世界。ゴールを決めるには技術が当然必要だが、もうひとつ、そこには何かを占う運が潜んでいる場合もある。
パチューカのホーム、エスタディオ・イダルゴを埋めたファンを、いきなり熱狂させた本田。本職のポジションでここからクラブ、そして日本代表で再び勝負しようとする男が、号砲代わりに決めた一発。これが幸運を呼び込む、復活のサインとなり得るのかどうか。
「やはり、始まりは肝心だった」――。
今回のゴールが、後に人々からそう評されれば、今度は本田の勝ちである。