アッレグリは、本田の中央起用を考えていた。

　ミランでの挑戦。その歯車が狂ったきっかけが、アッレグリの解任だったのは間違いない。イタリアでも攻撃的志向が強い指揮官だということは、現在国内で無敵を誇るユベントスの監督として見せているサッカーでもわかる。アッレグリは当時、本田を加えたミランでもアグレッシブな戦い方を繰り広げようとしていた。

　バロテッリを最前線に置き、その背後、中央のシャドーストライカーの位置にカカやロビーニョ、そして本田を配置するシステム。ミランでは結局、多くの監督のもとで多くの時間、右サイドで窮屈なプレーをしていた印象の強い本田も、初めのチーム構想では本職である中央エリアのポジションだったのである。

　しかし、すぐにアッレグリがクラブを去ったことにより、本田の処遇も大きく変化していった。新たに監督として古巣に戻ってきたセードルフは、彼を右のアウトサイドに配置。結局そのポジションがこの後も定着し、以降の指揮官も「サイドプレーヤー本田」という見立てのまま起用し続けた。

　本田はパチューカ移籍の際に、まずアロンソ監督にトップ下やインサイドハーフでのプレーを直訴したという。

パチューカの監督も当初はサイドの予定だった。

「サイドでの挑戦も前向きにやっていた部分もある。後悔はしていない」と本人はここ数年のプレーについて話しているが、自分が得意とするポジションでプレーする、そしてその環境を自ら掴み取ることの大切さを、彼はミランでの経験で痛感していた。

　実際、アロンソ監督も当初は本田をサイドで起用するつもりだった。今夏、オランダのPSVに移籍したメキシコ代表MFロサーノの後釜として考えていた。ただ、今のところは本田の主張を尊重しているようだ。それは今回、いきなりトップ下で起用したところからもうかがえる。デビュー戦後の会見でも、こんなコメントを残している。

「本田には今日のようにゴールを決めてチームに貢献してほしいですが、もちろんパスの方でも期待している」

　そしてこの今の状況を、何より本田も大切にしている。

「毎日の練習は素晴らしいし、ディエゴ（アロンソ監督）も良い雰囲気を作ってくれている。スペイン語がまだまだなので勉強中ですけど、監督と話をする時間がもっと必要だと思う」

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