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日本代表、最大の危機を乗り越える。
「アブダビの夜」で宮本恒は何をした?
text by
高橋夏樹(Number編集部)Natsuki Takahashi
photograph byHirofumi Kamaya
posted2017/08/28 14:30
ジーコジャパンでは、出場した試合すべてでキャプテンを務めていた宮本氏。国際Aマッチでは、通算71試合に出場した。
「前日までの不調がウソのように」迷いが消えた。
宮本さんはチームが「負のスパイラルに陥ってしまう危険性」を敏感に感じ取り、しかしメンバーの「腹のなかに溜まっているもの」を出させる最適なタイミングを見計らって、ここしかない、という時間を作った。
翌日の練習から「前日までの不調がウソのように」チーム全体の迷いが去った。
連動性、一体感が醸成され、敵地でのバーレーン戦は1-0で「大きな意味を持つ勝利」を挙げた。
まさしくキャプテンとしての仕事。
常日頃からチームのことを考え続けていたからこそできたことだった。
「みんな、宿舎に戻って1人になったらいろんなことをバラバラに考える。ネガティブなことを考え出す選手も、ポジティブに考える選手もいる。よりプレッシャーがかかってくるなかで、みんなのベクトルを同じにしていかないといけません。
誰かの部屋をノックして話を聞いたり、そこからヒントを得てチームをなんとかうまく持っていけたらいいな、とか、まあ悪あがきですよ(笑)」
「ある種の自己犠牲も必要です」
何がそこまでキャプテン・宮本を突き動かしていたのか。
「何故そういうことをするかと言ったら、みんなと一緒に勝ちたいから。代表が勝つために自分ができることは何だと考えたら、そういうことだと思っていましたから」
今オーストラリア戦、サウジアラビア戦を控える日本代表のキーポイントも、そこにあるのではないか、と宮本さんは指摘する。
「もちろんオーストラリアも力をつけてきています。それに対して、自分たちが積み上げてきたものを信じて、自分たちの良さを出していく。
ピッチの上での連動性とか、一体感。そういうものを出すには、ある種の自己犠牲も必要ですし、そういう気持ちや覚悟をみんなが持てるように、チームとしてもっていけるかどうか、ということだと思います。
長谷部(誠)選手も、そのあたりのタイミングはよく分かっていると思います」