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ACL、対照的な川崎と浦和の現状。
準決勝進出へ3週間ですべきこと。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2017/08/27 07:00
攻め続ける川崎、受ける浦和。ここ近年の様相とは違う戦いが、等々力でのACL第1戦では繰り広げられた。
「やり方次第でいくらでも行ける」(鬼木監督)
それでも、浦和にもストロングポイントがあるはずだ。昨季なら最少失点をマークした堅守だったが、それが崩壊した今季はミシャ体制で培ってきた攻撃が希望だったはず。
しかしボールを奪ったとしても、この日の浦和の選手からは余裕を感じられず、中盤でのボールロストも少なくなかった。この点については堀監督も「ビルドアップがうまくできずに苦しんだ」と振り返っている。特にボールを配給する柏木の不在は大きかった。川崎の攻撃を防御するはずだった3ボランチは、どんどん自陣へ押し込まれた。
それでも開始20分ほどまでは、相手に得点機を作らせなかった。しかし、それ以降はジリジリと川崎の脅威が増してくる。そして、33分にペナルティエリア深くまで攻め入った中村憲剛が、マイナスのパスを中央に送ると小林悠が左足でゴールへ蹴り込み、先制点を決めた。1-0で前半を終えると鬼木達監督は「もっと行けるはずだ」と感じていたと同時に、ハーフタイムに「やり方次第でいくらでも行ける、工夫しよう」と伝えた。
フィールドプレーヤー8人が守備に忙殺される浦和。
後半に入っても川崎優位の流れは続いた。50分にも小林のシュートを西川は防いだが、そのこぼれ球に反応したエウシーニョが鮮やかにボレーシュート。守っている赤いシャツの選手たちの存在など、まったく関係ないと言わんばかりの川崎の追加点だった。
川崎は後半、人数をかけて攻撃しているわけではなかった。基本的には1トップと2列目の3人、合計4人がその中心で、ボランチやサイドバックは相手次第で加勢するという風にバランスよく戦っていた。
あまりに高い気温や湿度、先制点を奪った試合展開も一因だったとはいえ、明らかに手堅い戦い方だった。その川崎に対して浦和はゴールを守るために3バックとふたりのサイドハーフだけでなく、3ボランチの計8人が守備に忙殺される場面が何度もあった。
自陣に選手を多く割くため、前線からのプレスもうまくかからない。西川周作の広い守備範囲や遠藤航の前に出る強さという持ち味を生かしつつ、高い位置で守りながら攻めていく余裕も自信も、浦和からは感じられなかった。監督交代によって不得意分野に手をつけたことで、結局どんなスタイルを確立していくのかという疑問も感じる。