“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
Jクラブはこの男を見逃してないか?
ゴリゴリのFW、山梨学院・加藤拓己。
posted2017/08/24 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「ロケットランチャー加藤」
8月13日、SBSカップ最終日のU-18日本代表vs.U-18チェコ代表の一戦。
後半途中から投入されたFW加藤拓己が、1-1で迎えた後半アディショナルタイムに叩き込んだ渾身の決勝ダイビングヘッドゴールを見て、筆者は思わずTwitterでこうつぶやいてしまった。
鍛え上げられた鋼の肉体と、抜群の身体能力を駆使して、矢の様なダイビングヘッドを突き刺した――まるで鉄のかたまりが豪快に跳ね上がるように屈強なチェコDFたちを弾き飛ばして決めたゴール――それは、まさに“ロケット”のようなゴールに見えたのだ。
筋骨隆々で丸坊主。そして、プレースタイルも闘争心むき出しで、どんな相手にも気持ちで屈すること無く、真正面から立ち向かっていく。
「『俺、ヘッド強いよ』と言っているような選手にヘディングさせたくない。そんな選手を叩き潰すくらいの強さを示したい。吹っ飛ばす気持ちでやっている」と、取材でもストレートに気持ちを言葉にする。平成生まれとは思えない、どこか昭和の香りがするこの男は現在、山梨学院高校でプレーをする高校3年生だ。
軽やかなテクニックよりも、重戦車のようなパワーを!
彼は今、自身の進路を切り開くアピールの最中にある。プロ入りを熱望しているが、彼のもとには未だJクラブからの正式なオファーが届いておらず、大学進学かプロ行きかの岐路に立たされているようだ。チェコ戦で見せた「ロケットランチャー」は、まさに彼の決死のアピールが籠められた一撃だったのだ。
そんな加藤のサッカー選手としての土台作りは、小学校時代にまで遡る。
彼が憧れる選手は現・清水のFWチョン・テセ。
小学校低学年の時にテレビで見た川崎フロンターレの試合で、彼は大きな衝撃を受けた。
「2、3人を吹っ飛ばしてゴールを決めたシーンがあって、直感的に『僕もこういう選手になりたい』と思ったんです。そこからずっと競り合いを極めようと思って、球際と空中戦は誰よりも貪欲に取り組んできました」
中村憲剛などの軽やかでテクニカルなプレーよりも、重戦車のようにゴールへ一直線に突き進んで一撃で仕留める獰猛なストライカーに心を奪われた――。それによって、ドリブルやパスなど華麗な足技へと興味が行きがちな小学生時代を、彼は球際とフィジカルコンタクトの強化を欲する「ゴリゴリのストライカー」として過ごしてきたのである。