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世界水泳、金メダルなしの危機感。
平井コーチの打開策は“部活”!?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2017/08/06 08:00
200m個人メドレーで銀メダルを獲得した大橋悠依。初出場の選手でも結果を残せるための環境づくりは、今後も必須だ。
五輪のプレッシャーは個人では受け止めきれない。
当時、ヘッドコーチに就任した上野広治氏が掲げたのが、代表を文字通り“チーム”にすることだった。
「個人競技ではあるけれど、オリンピックのようなプレッシャーのかかる舞台では、個人では受け止めきれない。みんなで送り出すことで力を出せる」
そんな考えを生むヒントとなったのが、高校生の大会だった。
「大会のときは、学校の水泳部が一丸となって応援する。学校対抗なんです」
それ以来、所属クラブ間の垣根を取り払ってコーチと選手の間の壁もなくすことに腐心した。2000年前後からの選手たちは、その過程を積み重ねてきたことで選手ミーティングも当たり前になっていった。
チームであることを土台にしつつ、リオデジャネイロ五輪の前の年あたりからは所属先のコーチと選手で計画を練り、強化を進める方向性も打ち出してきた。最も選手をよく知るコーチが主体となるのがよいのではないかという考えあってのことだ。それがリオデジャネイロ五輪での金メダル2個を含む7個のメダルにつながった。
経験ある選手のトレーニングを見せて、刺激を与える。
その一方で、結果を出せない選手もいたのも事実である。普段から指導しているコーチが最も選手を知っているのは確かだが、それを徹底させすぎるとかえって近視眼的になる可能性も生まれる。ゆえに選手が行き詰まりを感じ、不振に陥った面を感じさせたケースもあった。そのような場合には、外部の刺激があった方が潤滑油になることもある。
今大会を終えて、さらにチーム化を図ろうとしている理由には、若手の伸び悩みにもある。平井コーチの中には、ジュニア世代の選手をナショナルチームに呼んで一緒に練習させるプランもあるという。経験のある選手のトレーニングを目の当たりにする機会の重要性を感じたからだ。