スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
ダルビッシュと新天地ドジャース。
どうしても必要だった「最終兵器」。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2017/08/05 07:00
ドジャースに合流したダルビッシュ。首脳陣との会話では笑顔を見せるなど、早くもチームに馴染みつつある。
マエケンらは投球回数が100イニングスに達してない。
過去数年を振り返っても、ドジャースの有望選手は、多くがスター街道を歩んでいる。ジョク・ピーダーソン、コーリー・シーガー、コーディ・ベリンジャーらがそうだ。ドジャースのGMファルハン・ザイディは、心中ひそかに快哉を叫んだのではないか。この交換ならば、もしダルビッシュが来季以降、他球団を選んだとしても、けっして損ではない。
逆にいうと、ドジャースは久しぶりのワールドシリーズ制覇のために、どうしてもダルビッシュを必要とした。
ドジャースのチーム防御率は、8月1日現在、3.08で30球団中ベストだ。ただ、絶対エースのクレイトン・カーショーを除くと、長いイニングスを任せられる投手がいない。12勝1敗のアレックス・ウッド、防御率3.35のリッチ・ヒル、10勝4敗の前田健太。だれを見ても、今季の投球回数は100イニングスに達していない。デイヴ・ロバーツ監督の方針もあって、彼らは5回か6回で降板させられるケースが非常に多い。
となると当然、ブルペンが忙しくなる。幸い、抑えの切り札ケンリー・ジャンセンを筆頭に、ペドロ・バエスやジョシュ・フィールズが好調なため、ここまでは大過なく来ているが、短期決戦のポストシーズンではどうしても戦い方が変わってくる。
最大の懸念はカーショーの「ポストシーズンの弱さ」。
最大の懸念は、不規則な間隔で投げたときのカーショーに不安が残ることだ。近ごろは好投するようになったが、一時期のカーショーには「ポストシーズンに弱い」という評判が付きまとった。2013年のNLCS、'14年のNLDSではともにカーディナルスに乱打されたし、'16年のNLDSでナショナルズに打ち込まれたゲームも記憶に新しい。「ストレスがかかったときのカーショー」は、ときおり大きく乱れてしまうのだ。
だが、ダルビッシュが加入すれば話はちがってくる。2番手の彼が長いイニングスを投げ、ウッドやヒル(もしくは前田)が3戦以降でまずまずの投球を見せれば、カーショーへの負担はずっと軽くなるし、ブルペン総動員の非常事態を避けることも可能になる。