松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹と勝者スピースの差。
解決すべき最後の「HOW?」とは。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2017/07/25 11:30
松山が見せる最終日のチャージは、アメリカでもすでに定着している。それだけに今回の最終日は残念だったことだろう。
不安をひきずり「とりあえず」で打ってしまった一打。
粘れるかどうか。挽回できる、しようと思えるかどうか。それは、何打差か、何打落としたかといった数字だけの話ではもちろんない。
「今日は練習場もすごく悪くて、とりあえずフェアウェイの方向に打っておこうかなという感じで打った。そのあともなかなか上手く打てず、大変な一日になった」
ウォーミングアップの段階からショットの不調を感じ、自信が無かった。不安があった。目標が曖昧なまま、「とりあえず」で打ってしまった。そんなふうにクリアではなかった彼の気持ちが自ずとボールに伝わり、だからボールの行方は定まらなかった。
「どうにかパープレーに戻したい」
しかし、自信のないままの模索では出口に辿り着くことは難しく、最終日の松山は優勝争いの蚊帳の外へと押し出されていった。
「ここからが新しい試合」という言葉を信じたスピース。
一方、スピースは優勝を意識するあまり「残念ながら自分で自分にプレッシャーをかけてしまい、望まない出だしになった」と悔いていた。彼もまた序盤で松山同様に3つスコアを落とし、自信を失いかけていた場面もあった。
だが7番、さらには13番で「ここからが勝負」、「ここからが新しい試合」「ここから流れを変えるぞ」と叱咤激励したキャディのマイケル・グレラーの言葉を信じ、それを「やろう」、「できる」と信じて彼は実践していった。
どちらも出だしで3つスコアを落としながら、スピースと松山の差を広げていったものは、技術そのものの差というよりも、技術や練習に裏打ちされて培われた自信ではなかったか。そして気持ちを切り替え、自分自身であれ、キャディであれ、運命であれ、信じる心。そんなメンタリティの持ち方と強さが、2人の差を広げたのだと私は思う。