松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹と勝者スピースの差。
解決すべき最後の「HOW?」とは。
posted2017/07/25 11:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
全英オープン最終日。首位から7打差の5位という好位置でロイヤル・バークデールの1番ティに立った松山英樹の胸の中に一抹の不安があったことを知ったのは、彼が14位まで後退して4日間を終えた後だった。
3番ウッドを握り、セットアップに入った松山。構えてからスイングを始動するまでの所要時間は、ほぼ毎試合、メディアとして彼のスイングを眺める私の中にも感覚的にインプットされている。クラブを握る彼の両手が動き出したとき、そのタイミングがいつもよりわずかに早いと咄嗟に感じ、心の中で小さく「あっ!」と叫んだ。
その直後、インパクトした松山の表情が「あっ!」と叫び、同時に彼は右手で右方向を大きく指し示した。
ボールの行方を確認する「SPOTTER(スポッター)」のアームバンドを付けた英国人男性が、すぐさま首を横に振り、「ノー。ノーチャンス!」と言った。
第1打はアウトオブバウンズ(OB)。メジャー初優勝を目指し、猛追が期待された彼の最終ラウンドは、トリプルボギー発進となった。
「ボギーとかダボで収まっていたら……」
その後もティショットは曲がり、アイアンショットにキレはなく、長いパットがカップに転がり込むような強運を引き寄せる気配もまるで感じられない。
下を向いて歩く松山、ロープ内を歩く日本メディア、ロープ外を歩く日本人ギャラリー。重苦しい空気が立ち込める中、松山の巻き返しはついぞ見られず、首位とは10打も開いた14位でフィニッシュ。
「(1番が)ボギーとかダボで収まっていたら、もう少し気合いを入れ直してという感じはあったけど、トリプルボギーにしてしまい、うまく切り替えることができなかった。パープレーに戻したい気持ちはあったが、それができなかったのは自分の技術の無さです」
悔しさを噛み締めながら、松山はそう振り返った。