松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹と勝者スピースの差。
解決すべき最後の「HOW?」とは。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2017/07/25 11:30
松山が見せる最終日のチャージは、アメリカでもすでに定着している。それだけに今回の最終日は残念だったことだろう。
執拗な挽回力は、松山の武器だった。
技術の無さ――世界2位を誇る本人がそう言うのだから、技術面の不足は、きっとまだまだあるのだろう。だが、バークデールの最終日の松山は技術云々より、諦めるのが早かったのではないだろうか。
ネバーギブアップの強靭な精神力。落としても這い上がる執拗な挽回力。それは松山が身に付け、武器としてきた彼の強み、彼らしさだ。
今年のメジャー大会だけを振り返ってみても、マスターズでは最終日に5つ伸ばして28位から11位へ急上昇。全米オープンでは「最悪です」と吐き捨てた初日の出遅れを挽回し、終わってみればメジャー自己最高位の2位となり、メジャー制覇の夢ににじり寄った。
彼には辛抱強さが備わっている。だからこそ、厳しい練習やトレーニングを自らに強いてここまで来た。だがこの全英最終日は、トリプルボギーを喫した出だしの1ホールで彼の持ち前の粘りが消えてしまった。
勝ったスピースも、苦しいスタートだった。
最終日、松山より下から這い上がった選手は何人もいた。一気に7つも伸ばし、3位に食い込んだ中国人のハオトン・リー。3つ伸ばして4位になったローリー・マキロイもそうだった。
優勝の可能性が小さいところからならノープレッシャーでスコアを伸ばせるという見方は、もちろんできる。だが、それならば優勝に一番近い位置からスタートし、出だしの4ホールで3つ落としたジョーダン・スピースはどうだったかと言えば、松山に負けず劣らぬ最悪の発進を喫し、さらには13番でティショットを大きく右に曲げ、ラフの中の土にボールが埋まる大ピンチに遭遇。
だが、それでもスピースは食い下がり、粘った。次打をどこからどう打つかに20分以上を費やすテンヤワンヤの中、ダブルボギーを避けてボギーで収めたことに自信を得て、14番からは4ホールで5つ伸ばす快進撃。
そんなスピースの執念の巻き返しを見せつけられれば、やっぱりあの日の松山は、諦めるのが早かったのではないかと思えてならない。