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県立高校に140km投手が5人も!?
三重でも感じた「複数投手制」の波。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2017/07/25 07:00
大阪桐蔭も、複数の投手を擁して甲子園を目指している。徳山壮磨というエースがいても、2人目以降を育てる努力は怠らない。
大阪屈指の進学校にも期待度の高い投手が。
府内屈指の進学校・天王寺高校の左腕、木村圭吾(3年)、私立大阪学芸高左腕の本格派、山本恭平(3年)、無名校とは言えないが、近大付高の千代(せんだい)七世(3年)がそんな投手たちだ。
木村のストレートは130キロ前後だが、前肩が開かないフォームから繰り出されるストレートで明星打線を4回まで4安打に抑え込んだ。山本は木村より知られた存在で、マウンドに上がったとき味方応援席から「140キロ!」という歓声が飛んだのは、専門誌にそのように書かれていたからだろう。
偵察隊のスピードガンによるとこの日のストレートの最速は134キロだったが、自己最速は140キロに達しているようだ。千代のストレートも自己最速140キロに達しているが、私は斜め、横に投げ分けるスライダーのバリエーションのほうに惹かれた。
強豪私立以外に有力選手がいるのは楽しい。
捕手の無名球児も紹介したい。攻守交代の間、投手は3~5球ピッチング練習をし、その最後のボールを受け取った捕手は実戦を想定して二塁ベース上に待機する内野手(主に遊撃手)に送球する。これが「イニング間の捕手の二塁送球タイム」で、私は「イニング間〇秒」と紹介することが多い。このときの強肩の目安は2秒未満で、実戦なら2.05未満で強肩と言っていい。
府立寝屋川高の幸徳将吾(3年)はこのイニング間の二塁送球が最速2.02秒を計測、積極的に内角にミットを構える攻撃的なリードも光った。府立池田高にも永井歩公之(3年)という強肩捕手がいて、イニング間の最速は2.01秒だった。ともに強肩の域には達していないが、「いい肩」くらいの表現はできるレベルにある。
バッティングはバットという道具を用いて行うので技術習得に時間を必要とするが、投手や捕手のスローイングは道具を使わず、ある程度身体能力で勝負できる。つまり、無名校からも好投手や好捕手が輩出される可能性があるのではないか、ということを言いたかった。
県立高の菰野高でも5人の140キロを超える本格派を揃えることができ、大阪の無名校からも好投手や好捕手を輩出されるのである。この7月の西日本遠征は私に野球の新たな可能性を教えてくれた。