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フレッシュ球宴に好投手が多すぎ!
巨人・畠世周の“外す意欲”に驚く。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/07/25 11:00
プロ初登板の一週間後にフレッシュオールスター出場、さらに一週間後にプロ初勝利。畠世周のプロ人生が高速で動き出した。
1イニング限定なら150キロを投げる投手は結構いる!?
以前、誰に聞いたか忘れてしまったのだが、プロの選手がこんなことを話していたことがある。
「プロの投手なんて、先発して5イニング、6イニング投げようと思うから、140キロ前半ぐらいですけど、1イニング限定で『さあ、行ってこい!』って送り出されたら、150キロぐらい投げる力、みんな持ってますよ」
その話を聞いて思い出したのが、ソフトバンク・攝津正のことだった。
社会人野球・JR東日本東北(仙台市)の8年間、ずっと主戦投手で投げ続けた攝津は、社会人では知らぬものがいないほどの“安定株”として、いつもコンスタントに好投を繰り返す投手だった。
しかし、速球の球速帯がいつまで経っても「135キロ前後」。そこがネックになって、社会人屈指の好投手なのに、ドラフトでは毎年“候補”のままでとどまっていた。
「社会人当時は全力でストレート投げたことないんです」
それが2008年のドラフトでソフトバンクに5位に指名されて入団し、中継ぎとして登板すると、たちまちのうちに150キロ前後に球速がアップ。終盤の1イニングを、持ち前の精緻なコントロールを伴った力のピッチングで抑え込み始めたから驚いた。
「僕、社会人当時は全力投球でストレート投げたことないんです。いつもどこかで力をセーブしながら、完投できるように、勝ち上がったら次の試合も先発・完投できるように、そんなことばかり考えながら8年間投げてましたから」
こちらは確か、新聞談話だったように思う。
常勝・ホークスのセットアッパーという重責を担って、順調に結果を積み上げていた頃だった。攝津のそんな“打ちあけ話”に接して、投手にはそんな世界もあるんだ……と妙に胸ときめいたのを覚えている。