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フレッシュ球宴に好投手が多すぎ!
巨人・畠世周の“外す意欲”に驚く。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/07/25 11:00
プロ初登板の一週間後にフレッシュオールスター出場、さらに一週間後にプロ初勝利。畠世周のプロ人生が高速で動き出した。
投げられない状態で入団した畠が……。
いいな……と思ったのは、畠世周が捕手・小林誠司のミットだけを見つめて、一心に投げ込んでいた姿だ。
ヒジを手術して、投げられない状態で入団してきた投手だ。しかもドラフト2位の上位指名。
思いは千々に乱れたはずだ。
私自身、「巨人2位・畠世周」の今季について楽観的だったとは言いがたい。
あやまらなきゃな……という気持ちと、それだけに、この先の無事と奮投を願う思い。そんな中で、コンスタントに140キロ後半をマークするスピード豊かな速球に加えて、スライダー、カーブ、チェンジアップにフォーク……ほかにも、何か微妙な動きをする“隠し球”もこの目にチカッと来ていた。
魔球と呼ぶほどの変化を伴うボールはないにしても、投げ損じが少なく、多彩な球種をムラなく変化させて、70%以上構えたミットに決められる能力。
打者のタイミングを外す意欲は、成功の友。
何より感心したのは、走者を背負った場面で、セットポジションからクイックリズムでスライダー、チェンジアップを投じて、打者のタイミングを外そうとする旺盛な意欲だ。
年若く、抜群の身体能力を有した投手が、見えないほどの快速球を投げたいと願う心理はよくわかる。
しかし、野球とはバックスクリーンに表示される球速を競うゲームではない。
持ち前の快速球、剛速球をより輝かせるためにも、その“対極”にある変化球の打者の手元での変化とそのコントロールを磨くこと。
「勝てる投手になりたい」
もしも投手を目指す若人がほんとにそう願うのならば、スピードを上げることよりも、むしろこっちのほうではないか。
投手の“仕事”とは、あくまでも、打者のタイミングを外すことなのである。