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フレッシュ球宴に好投手が多すぎ!
巨人・畠世周の“外す意欲”に驚く。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/07/25 11:00
プロ初登板の一週間後にフレッシュオールスター出場、さらに一週間後にプロ初勝利。畠世周のプロ人生が高速で動き出した。
スピード以上に、変化球の感動は大きかった。
今年のフレッシュオールスターで快投を演じた若い投手たちの投げっぷりを見て、実は、私が心を動かされた理由は、スピードだけじゃない。
登板した17人の投手の多くが、オッ! と思わず声が出てしまうような“飛び道具”を持っていた。
飛び道具、つまり変化球である。
むしろ、感動はこちらのほうが大きかった。
2イニングで3つの三振で奪ったソフトバンク・古谷優人のスライダーは、ホームベースの上で真横にふっ飛ぶように滑り、中日・笠原祥太郎(新潟医療福祉大・1年目)のスライダーはホームベースの上で地面に突き刺さるほど鋭くタテに落ちた。
スライダーなら“2奪三振組”の千葉ロッテ・成田翔(秋田商・2年目)も印象深い。動きは小さくても、その分キュッと鋭く動いて高精度にコントロールされ、カウント球にも勝負球にも使える頼もしい武器になっていたし、同じ千葉ロッテ・酒居知史(大阪ガス・1年目)のフォークは速球と同じ腕の振りと軌道でやって来ると、打者の手元でスッとボールゾーンに沈んで、スイングをかいくぐって見せた。
巨人・1年目の畠は一週間後に一軍で初勝利。
ソフトバンク・小澤怜史(日大三島高・2年目)もタテのスライダーと区別しにくい高速フォークで若い打者たちを苦しめ、巨人・畠世周(近畿大・1年目)のスライダーとチェンジアップも、速球以上の猛烈な腕の振りが味方になって、オール・ウエスタンの4番・メヒアが完全にタイミングを逸していた。
その畠世周が一週間後の19日、一軍の中日戦で先発し8回の途中まで2点に抑えて、プロ初勝利を挙げた。
首位・広島カープに大きく離された4位。前日には、山口俊の残念なニュースも流されて、あまりよくないムードの中での快投だけに、チームにとっては、ただの“1勝”とは意味合いの違う勝ちだったはずだ。