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18歳に129億円の値札がつく異常さ。
サッカー移籍市場バブルの行く末は? 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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posted2017/07/21 07:00

18歳に129億円の値札がつく異常さ。サッカー移籍市場バブルの行く末は?<Number Web> photograph by AFLO

U-21欧州選手権では移籍騒動の渦中にあったドンナルンマに向けてオモチャの紙幣が投げ入れられた。スター候補への重圧は、年々増している。

エンバッペ、ドンナルンマの価値はすでに129億円。

 ルカクもポグバも特大の才能を有してはいるが、まだなにも偉大なことを成し遂げているわけではない。そんな選手たちにまさしく桁違いの移籍金が支払われているのだ。

 また今夏、カイル・ウォーカー(トッテナム→マンチェスター・シティ)に費やされた5000万ポンドはディフェンダーの史上最高額を更新し、ミラン・シュクリニアル(サンプドリア→インテル)やマイケル・キーン(バーンリー→エバートン)といったコアなファンしか知らないような若手にも、2500万ポンド以上の移籍金が投じられた。

 さらに、17歳のヴィニシウス・ジュニオール(フラメンゴ→レアル・マドリー。加入は2019年7月)は4600万ユーロ(約59億円)の移籍金で取り引きされ、キリアン・エンバッペ(モナコ)やジャンルイジ・ドンナルンマ(ミラン)という2人の18歳の値札は、それぞれ1億ユーロ(約129億円)は下らないと目されている。そんな重荷を背負わされた10代の彼らが不憫に思えてくる。

 2001年にレアル・マドリーがジネディーヌ・ジダンを迎えるために、ユベントスに7750万ユーロ相当を支払って当時の移籍金最高額を更新したが、いま彼ほどのクラスの選手がクラブを替えれば、そこにはどれほどのカネが発生するだろうか。

優秀なアカデミーを抱えながら主力に定着しない。

 こうした状況は、フットボールの世界にも歪みを生んでいる。世界で最も裕福なリーグであるプレミアリーグでは昨今、自前の若手の出場機会の少なさが問題視されている。

 例えばチェルシーは、近年のユース世代のメジャータイトルをいくつも獲得した優秀なアカデミーを持っているが、そこからファーストチームのレギュラーを掴む選手は出てきていない。ユースチームで主将を務め、早くから将来を嘱望されていたナサニエル・チャロバーは今夏、ワトフォードへの移籍を決意した。

 毎シーズン、ローンに出されてきた22歳のセントラルMFは、同年齢で同じポジションのティムエ・バカヨコが3970万ポンドで加入したことにより、チェルシーに自身の未来がないと見切りをつけたのだろう。

【次ページ】 スーパー代理人によって、クラブが足元を見られる。

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