マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
周囲の刺すような視線に耐えて……。
高校球児が最初に試される能力は?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNaoya Sanuki
posted2017/07/13 08:00
野球に限らず、練習と試合では異なる能力が必要とされる。その筆頭が「本番の緊迫感」に耐える力だろう。
野球は、まず緊迫感に耐えることから始まる。
バッティングの実戦力とは、まず、投手との1対1の“緊迫感”に耐えることから始まるように思う。その緊迫感には、そこにいるほとんどの選手たちから浴びせられる、射るような視線に耐えることも含まれる。
そこを乗り越えてはじめて、バッティング技術であり、スイングスピードであろう。
投げるヤツがいて、打つヤツがいて、守るヤツがいて、それを見ているヤツがいる。それが「野球」である。
野球が上手くなりたいと思ったら、野球をしないと上達しないであろう。
ノックを受けることにはとても熱心な選手が、打者の打った打球は簡単にファンブルしたり、本気で追わなかったり……。そんな「本末転倒」を現場で結構多く見る。
誰からも本気の視線を浴びることなく、「打ってください」のボールをたくさん打っても、それはボールとバットを使った筋力トレーニングにしかならない。むしろ、フリーバッティングで大切にしたいのは、打者が本気で打った打球を追いかけて捕球し送球する“実戦的守備練習”として……ではないか。
技術の追求が進化すればするほど、その練習方法が細分化されるのは、ものごとの自然な流れであろう。
しかしそれにしても、今の野球には、パーツパーツの練習が多すぎやしないか。
高校野球にも、来春からタイブレーク方式が導入されることが取りざたされている今、ちょっとそんなことを考えてみたので、つらつらとつづってみた。