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周囲の刺すような視線に耐えて……。
高校球児が最初に試される能力は? 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byNaoya Sanuki

posted2017/07/13 08:00

周囲の刺すような視線に耐えて……。高校球児が最初に試される能力は?<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

野球に限らず、練習と試合では異なる能力が必要とされる。その筆頭が「本番の緊迫感」に耐える力だろう。

タイブレークの練習で打率が急上昇?

 先日、ある学生野球の監督さんと話していて、とても興味深いくだりがあった。

「この春からリーグ戦に導入されたんですが、ウチは打てないんですよ。その代わり、投手と守備は悪くないので、今までもロースコアの僅少差が多かった。それで、タイブレークの練習ばっかりやったら、リーグ戦のチーム打率が5分5厘も上がっちゃって……」

 ヒョウタンからコマ。

 監督さんはそんな表現をして、うれしそうに笑っておられた。

 どうして、そんなに劇的に数字が上がったのか?

 興味深かったのは、監督さんが選手たちに訊いてみた回答だった。

「実戦的なバッティング練習の時間が増えて、投手と“1対1”で向き合うことが普通のことになった。試合と同じ環境でたくさん打つ機会があったから、投手と向き合いながらたくさんの選手たちに視線を注がれて打つことに緊張しなくなった」

 昨年までは、7:3でフリーバッティングが多かったのを、今季は最初ハーフ、ハーフにしたという。そうするうちに、徐々にリーグ戦で結果が出始めてきたので、今度は逆に7:3で実戦形式の走者をつけた「一本バッティング」を多くして、そういう変化を獲得したという。

 よいことだと思う。

フリーバッティングは、強いチームにはいらない?

 以前にも書いたかもしれないが、私は過去のある時から、「フリーバッティング不要論者」である。

 チームと選手のレベルが、まだ「ボールを打つのに慣れること」を優先せねばならない程度なら、フリーバッティングも必要だと思うが、トーナメントの大会で“中以上”に進めるレベルのチームならば、全体練習のバッティングはすべて実戦形式にして、どうしてもフリーバッティングをしたければ、それは自主練習の時間に行えばよいのではないか……。

 かなり以前から、そう考えるようになった。

【次ページ】 野球は、まず緊迫感に耐えることから始まる。

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