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梶谷隆幸「ま、やる気ない系なんで」
ヤジにもブレない“三振王”の本心。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byKyodo News
posted2017/07/12 08:00
ツボにハマった時の長打力、そして走力はチームでも有数。2番打者でも下位打線でも、梶谷の存在は相手にとっては厄介だ。
「浅いカウントで当てに行くのがぼくは大っ嫌い」
周囲に助言を求め、カットで粘る練習に挑んだ。三振しにくいバットの軌道を探り、追い込まれてからの思考法はどうあるべきかを模索した。試行錯誤はかれこれ「4年ぐらいやっている」。しかし、これという答えにたどりつくことはできずにいる。わかったのは、自分が歩むべき道はそこにないこと、三振は自分らしいバッティングをするためにはやむをえないということだった。
三振0で安打も0では意味がない。三振10でも安打が10あればいい。単純に言えば、そういうことだ。
「もともと早打ちではありますけど、浅いカウントで当てに行くのがぼくは大っ嫌いなんです。極端な話、0-0(ノーボールノーストライク)から当てに行ってセカンドゴロになるぐらいなら、三振のほうがいい。(当てに行かなければ)打つチャンスが残るわけだし、思いきって振れば長打につながる可能性もある。三振の数を減らしたら率も上がってくるかといったら……そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。そこは難しいですよね」
あっけない空振り。気のないスイング。傍目にはそんなふうに見えたとしても、それは梶谷が迂回に迂回を重ねてたどりついた打撃のスタイルだ。それが梶谷隆幸という人間なのだと言ってもいい。
それでも12本塁打はキャリア最多ペースである。
投手が投げるボールに「合わせる」ことをせず、3つのストライクのうち1球でいいから自分のスイングで捉えることに重きを置くスタンス。キャリア最多ペースで刻む本塁打(12本)が甘い果実だとすれば、狙いが外れてあえなく三振した時の悪印象は、茂みに突き刺した腕が負わねばならない傷なのだ。
何かを得るために何かを犠牲にする。その割り切りの潔さは梶谷の特質だ。
三振との向き合い方がそうであるように、考え抜くというプロセスを経るからこそ、割り切れる。