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NBA流スーパーチームの作り方。
オフの素早い移籍活動は選手主導!? 

text by

長澤壮太郎

長澤壮太郎Sotaro Nagasawa

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photograph byNathaniel S. Butler/NBAE via Getty Images

posted2017/07/05 08:00

NBA流スーパーチームの作り方。オフの素早い移籍活動は選手主導!?<Number Web> photograph by Nathaniel S. Butler/NBAE via Getty Images

彼らを凌駕するチームは現れるか。

長い時間をかけての移籍交渉は、時代と共に少なく。

 オフの動きが目まぐるしいふたつ目の理由は、選手主導で水面下の準備をしているため、公式に面会する頃にはシステムや技術的な話はクリアになっていて、条件面だけに焦点が絞られているからであると言える。

 昔のように、面会で監督やGMの思想からはじまり長々とプレゼンで説得されて、一度持ち帰って2度目、3度目の交渉をするといったやりとりは減っているのだ。

 選手はそもそも興味のない球団とはアポすら入れない時代である。

 現代のバランスを表す代表的な例が、4大巨匠の1人で11度の優勝に関わってきたフィル・ジャクソンの事例だ。

 低迷しているニックスの球団社長に破格の年俸とともに鳴り物入りで就任した彼だが、15年前の古典的なトライアングルオフェンスをアレンジすることも許さず選手に押し付け、プレイスタイルが合わない看板選手のカーメロ・アンソニーと次世代の星であるクリスタプス・ポルジンギスの2人からそっぽを向かれた。それでも「オレ流」を曲げず、公の場で選手をバッシングし、トレードで放出しようとした。

 就任当初は球団の救世主と崇められたが、球団内のコミュニケーションが全く上手くいかず、選手、代理人そしてメディアから総スカンを喰らい、FA選手はニューヨークを真剣に避け、ドラフト候補生も気に入られて指名されることを恐れ、ワークアウト(ドラフト前の練習参加)を拒否するまでに至った。フィルを擁護していたオーナーもさすがに庇いきれず、つい先日フィルは街を去ることになった。

選手主導のチーム作りに対応していないチームは……。

 今どきは、どのチームも選手主導になっているものの、かといってマエストロ達の影響力が皆無という訳でもなく……ポポビッチやライリーなどは時代に合わせ上手く自身の存在感とのバランスを保っているように見える。

 選手とフロントが上手くタッグを組むのが今の主流なのだ。

 その連携が取れていないチームには、クリス・ポールがロケッツへスピード移籍したような見事な段取りなど準備できる訳がないのだ。

 選手達は所属チームを越えて、どの球団が良い環境で働けて、どのGMがやりくり上手で信頼が出来るか、全て共有している。だから普段から選手との関係作りに成功している球団でなければ、今の時代は良い選手を集められないのである。

 そして選手同士がその気になったとしても、フロントが思い切った決断をすぐに下せないと、あっという間に他の球団に獲られてしまう。

 今のウォリアーズ、キャバリアーズに勝つためには1秒でも早く多くのタレントを確保しなければ太刀打ちが出来ないのだ。

 業界広しと言えども、スーパースターは数える程しか存在しない。

 NBAオフの狂騒曲はまだまだ続く――。

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クリーブランド・キャバリアーズ
ゴールデンステイト・ウォリアーズ
ロサンゼルス・レイカーズ
ボストン・セルティックス
ケビン・デュラント
レッド・アーバック
フィル・ジャクソン
パット・ライリー
グレッグ・ポポビッチ
クリス・ポール
ドレイモンド・グリーン
ジェイムズ・ハーデン

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