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高さ以前に、日本は技術が足りない。
中田久美が開始したバレー観の革命。 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byAtsushi Hashimoto

posted2017/07/04 11:00

高さ以前に、日本は技術が足りない。中田久美が開始したバレー観の革命。<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

5月下旬の記者会見では「スピード、正確性、連携、けた外れの集中力、世界に負けない強さ」を強化ポイントに挙げていた。

「スパイカーも、セッターも技術が足りない」

 5月に神戸で開催され、久光製薬スプリングスとNECレッドロケッツが出場した世界クラブ選手権でも、スパイクやキルブロック(ボールを真下に落とすブロック)など派手なプレーだけでなく、世界との大きな差を感じさせたのはチャンスボールや二段トスなど、基本技術の精度。常套句のように言われる「高さ」と「パワー」を警戒するあまり、本来やるべきプレーの質が疎かになり、8チーム中7位、8位と日本勢は惨敗を喫した。

「どこかで『上から打たれる』と諦めちゃっている部分があるじゃないですか。確かに上から打たれるスパイクもあるけれど、全部が全部そうじゃない。確実に取らなければならない1点があるし、その取り方をどうするか。世界では2m級の選手たちが、当たり前のプレーを当たり前にやる。比べて、日本はどうなの? って。

 パスが返って、ブロックが1枚になって、圧倒的に攻撃側が有利なはずなのに決められない。どうして? と理由を紐解いて考えれば、スパイカーも、セッターも技術が足りないということ。私はそこを曖昧にしたくないんです」

最初は懐疑的だった古賀紗理那。

 東京五輪までの時間は限られ、描くイメージが形として完成するまでには「時間が足りない」と中田監督は言うが、合宿を重ねるうち、日々の練習で得られる成果を選手たちも少しずつ感じている。その象徴が、今季V・プレミアリーグでMVPを受賞した古賀紗理那だ。

 NECレッドロケッツではパスを高くして間をつくり、十分な助走から高さを生かした攻撃を展開するため、全日本が始動した当初は「スピードを重視すると言われて戸惑った」と古賀は言う。

「(1本目の)パスが高くなかったら絶対無理だ、って。だから最初は何でもかんでも速くしなきゃ、と思ってバタバタしていたんです。でも久美さんから『ゆっくりしたバレーが悪いわけじゃない。でも速いテンポのバレーもできるようになったらそれはプラスだし、ここではそういうバレーをやってほしい』と言われて、少しずつ意識も変わった。

 確かに何でもかんでも高さを出せばいいわけではないし、速さにも対応できるようになれば、これからの自分にとって武器になる。まだ慣れないことも多いけれど、助走で修正したり、入る位置を変えたりしながら、新しいことにチャレンジしていきたい、って今は思います」

【次ページ】 ワールドグランプリは、東京五輪へのスタート。

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