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インテリスタの愛情はもう冷えた。
長友佑都、7年目に味わう言語の壁。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byAFLO

posted2017/06/30 11:00

インテリスタの愛情はもう冷えた。長友佑都、7年目に味わう言語の壁。<Number Web> photograph by AFLO

サイドライン近くを90分間にわたって上下動する姿こそが長友らしさである。ベンチを温め続ける姿は似合わない。

長友と同じくらいの小兵メルテンスにまで競り負けた。

 67分には失点したときとほぼ同じ位置で、FWメルテンスとボールを競り合った。

 最終ライン間際でボールを持っていた長友だったが、メルテンスから左肩で弾き飛ばされ、ボールを奪われた挙句、絶好のクロスを放たれた。MFログのシュートは、名手ハンダノビッチが何とか凌いだものの長友の責任は重かった。

 何より、マッチアップした相手は大型のフィジカルを誇るFWイグアインでもFWジェコでもなく、小兵メルテンスだった。自分とほぼ上背が変わらないFWに、最終ラインの球際で競り負けたのだ。長友ほどの経験を持つDFなら、絶対にやってはならない類いのミスだった。動揺した長友が再びボールを持つと、ホームであるはずのサン・シーロの6万観衆はブーイングを背番号55へ浴びせた。

 注目度の高い人気カードだっただけに、長友の失態はイタリア中のサッカーファンの目に焼き付いた。地元紙やTVメディアは当然のように最低点をつけ、「率直に言ってセリエAはおろか2部リーグでも絶対許し難いレベル」と酷評を突きつけた。

 猛批判に耐えかねた長友は、ツイッターで「イタリアでは良ければ神様、悪ければ犯罪者扱い。人としてのモラルはない」と抗議した。

長友に対するイタリアの世論はシニカルさを増した。

 しかし、そのツイート内容がイタリアで報道されると、逆にインテリスタたちの怒りの火に油を注ぐ結果になった。目の肥えたファンの指摘は筋が通っているものも多いだけに、長友に対するイタリアの世論は急速にシニカルさを増していった。

「ミスをしたら批判されるのはイタリアだけじゃない。イングランドでもフランスでもスペインでもドイツでも、世界中どこに行っても同じだ」

「長友よ、ナポリ戦でインテルが負けたのは君だけのせいではない。責任は誰より君を先発させたピオリ監督にあり、君と7年も契約しているインテルの経営陣にある」

「エリア内での長友のミスはもう何度目だろう。昨季のナポリ戦でも(ユベントスの)イグアインにアシストしたし、最近の代表戦でもPKを与えたらしいじゃないか」

 インテリスタたちの論調は真摯で冷徹だった。彼らの長友を見る目は冷め切っている。長友とインテリスタのすれ違いが悲しい。

【次ページ】 言語と文化の壁はなおも大きいのでは、と思う。

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