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五輪種目化でスポンサー問題勃発!?
ボルダリング界で選手と協会が対立。 

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津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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photograph byMiki Sano

posted2017/06/05 08:00

五輪種目化でスポンサー問題勃発!?ボルダリング界で選手と協会が対立。<Number Web> photograph by Miki Sano

選手たちがユニフォームにつけた抗議ステッカーには、ボルダリングの歴史が詰まっている。問題の前向きな解決を望みたい

企業が何を求めてスポンサーになるかを考える。

 有料入場者が増えればチケット収入に直結するだけではなく、グッズ販売などの点でも効果が見込める。さらに、企業側にスポンサーシップを結ぶメリットを目に見える数値で示せるため、結果的に企業とWin-Winのスポンサーシップの構築につながる。

 さらに、選手にもメリットがある。選手個人の支援をする企業にとって、顧客の多くは国内にいるため、注目度の低い国際大会での活躍よりも、日本で観客を多く動員してくれた方が支援の意義を見出しやすい。国内活動に理解のある個人スポンサーを獲得できれば、仮に“国際大会での個人スポンサーロゴ掲出禁止”になったとしても影響は最小限に抑えられる。

 もちろん、選手の側にも意識を変える必要はある。

 クライミング界には競技に専念し、結果を残すことが支援に応えることだという認識があるが、スポンサーが選手個人を支援するのは、成績そのものよりも、その選手を通じてファン=顧客への波及効果を期待している側面が大きい。極論すれば、成績が良くてもファンが少ない選手より、成績は普通だけれど圧倒的にファンが多い選手の方が、企業にとっては価値が高いということだ。

 2024年のオリンピック開催地は、今年9月にパリかロサンゼルスのいずれかに決まる。両都市ともクライミング人気が高いため、競技が継続される可能性は高い。それによって黙っていても協会スポンサーが格段に増え、2024年までの7年間、すべてのカテゴリーの選手の活動がサポートされるならば、それに越したことはない。

 だが、協会スポンサー収入がそれほど増えなかったとしたら……今後も限られた選手だけが脚光を浴びる状況が続く可能性がある。協会が時代の趨勢をしっかりと見極めて、マイナー競技からメジャー競技へと華麗なトラバースを果たしてくれるのを期待している。

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