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五輪種目化でスポンサー問題勃発!?
ボルダリング界で選手と協会が対立。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byMiki Sano
posted2017/06/05 08:00
選手たちがユニフォームにつけた抗議ステッカーには、ボルダリングの歴史が詰まっている。問題の前向きな解決を望みたい
個人スポンサーは、小さくも重要な存在だった。
資金面のハードルを超え、ワールドカップに出場して6位以内になれば選手は賞金を手にすることになる。1位は約40万円で、段階的に下がり6位なら約4万円だ。
また、国際大会で実力を示した男女各2選手は、強化指定選手として日本オリンピック委員会(JOC)からの強化費が年間約700万円支給され、競技にいっそう専念できる仕組みになっている。
「富める者はさらに富み、貧しき者はチャンスをつかめない」という状況にあって、選手たちの多くが活動の拠り所にしているのが、協会の下部団体である各都道府県山岳連盟からの国体選手強化費と、個人スポンサーである。
ただし、スポンサーといっても中小のクライミングメーカーなどからの現物支給が大半で、資金提供のケースは少ない。それでも日々の支出が抑えられ、活動資金を遠征費に回すことに繋がるので、選手にとってはかなり重要な存在なのだ。
こうした理由から、選手たちは協会の決定に異を唱えていたのだ。
五輪種目化で、協会の協賛金は6倍に。
協会が急いで事態の解決に動いた理由としては、新たな協会スポンサー獲得へのイメージダウンを避けたかったことが考えられる。スポーツクライミング、とりわけボルダリングのメディア露出は、東京五輪追加種目のサーフィン、スケートボード、空手と比べてもケタ違いに多い。こうした後押しを受けて知名度は大きく飛躍し、協会は企業から受ける協賛金を大幅に増やしてきた。
2014年が約1800万円、2015年は約1700万円だったのが、昨年は5744万円と約3倍になり、今年はついに1億690万円である。2016年、2017年分の財務報告書は公開されていないため、収支予算内訳書からの数字であるが、それでも3年で約6倍に増えていることがわかる。
協会にスポンサーがついた恩恵は、少なからず選手たちにも還元されている。国内唯一の公式戦「ジャパンカップ」は、今年、代々木第2体育館(来年も開催予定)で開催され、国際大会であるワールドカップも最大収容人数2700人のエスフォルタアリーナ八王子を利用できた。
昨年までの、アクセスも不便で収容人員も500人ほどしかない会場から比べれば、雲泥の差である。また、昨年から世界ユース選手権の遠征費の一部を協会が負担してくれるようにもなった。