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五輪種目化でスポンサー問題勃発!?
ボルダリング界で選手と協会が対立。
posted2017/06/05 08:00
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph by
Miki Sano
高まる人気や注目に水を差すことを避けたかったのか。はたまた、体裁を考えて問題を先送りにしたかったのか――。
スポーツクライミングを国内で統括する日本山岳・スポーツクライミング協会と、代表選手たちの対立はひとまず、双方が譲歩する形で決着した。
協会関係者によれば、「代表ユニフォームのベストに個人スポンサーのロゴを条件付きで掲出できることに決まった。ただし、オフィシャルスポンサーと業種がかぶる個人スポンサーの掲出はNG。来年以降の掲出については新たに交渉することに落ち着いた」と明かしてくれた。
ただし、肖像権に関する選手たちの要望は保留になっている。
事の経緯は、こうである。5月初旬に行われた国際大会のボルダリング・ワールドカップ八王子で、日本代表の有志は協会に反旗を翻して代表ユニフォームのパンツに『KEEP OWN SPONSORES for PRO activity』(プロ活動のために、個人スポンサーを守って)と書かれた抗議ステッカーを貼って出場した。
そこに込められていたのは、協会が昨年末に急遽決定した2017年度からの“国際大会での個人スポンサーロゴ掲出禁止”と“個人スポンサーによる選手の肖像利用禁止”に対する撤回要求だ。
ワールドカップに自腹で出場する選手も。
協会側が折れたのは6月9日、10日に行われるワールドカップ、アメリカ・ベイル大会に日本代表選手が再び抗議ステッカーを貼って出場すれば、抗議行動から1カ月経っても事態を解決できない協会の手腕が疑問視されることになる。大幅な譲歩には、それを避けるためという理由もあっただろう。
選手たちが抗議行動をした理由を知るには、彼らが置かれている背景を把握する必要がある。
スポーツクライミングの場合、日本代表になっても全選手に遠征費が支給されるわけではない。ワールドカップランク10位以内のS代表は全戦、前年ワールドカップで決勝進出のA代表は一部が支援されるが、国際大会の実績がないB代表が出場するのは自己負担になる(ただし、決勝に進出できればB代表でも遠征費は後日支給される)。
一見すると国際大会の実績を重視する実力主義のようにも映るが、実際のところ最初に求められるのは、競技力ではなく経済力ということだ。これはスポーツクライミングに限らず、協会の資金が潤沢ではない競技に共通していることでもある。