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錦織圭、ハッキリ見えた復調への道。
全仏の直前に取り戻した「試合勘」。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAP/AFLO
posted2017/05/29 11:55
全仏への足慣らしとしてはまずまずだった錦織。ちなみに準決勝の相手は、ジョコビッチを破って話題のアレクサンダー(20歳)の兄・ミーシャ。29歳で世界ランク33位(5月22日現在)。
無意識にブレーキを踏みながらの3試合だったが……。
もともとモチベーションの作り方が難しい大会だった。
もちろん目指すは優勝だが、四大大会の全仏開幕を前に体力を消耗しては元も子もない。優勝の二文字を口にしながら、「ちょっとでもけがの兆しがあればやめる(棄権する)」とも話しており、石にかじりついても、という気持ちにはなれなかったに違いない。むしろ、無意識のうちにどこかでブレーキを踏みながらの3試合だったのだろう。
それでも「いい試合を3試合やって、ちょっとずつ試合勘はよくなっている」は強がりとも言えない。
準々決勝では相手のマッチポイントを3本連続でしのいだ。第3セットのタイブレークも競り勝って、「負けてもおかしくない試合」(錦織)をものにした。大事な場面で集中力が上がり、優勢の相手をうっちゃったのは、本来の勝負強さが戻ったしるしとも見られる。
「試合勘」の中身は、大事なところでギアが上がるか、攻めるべき場面で機を逃さず攻められるか、少しでもひるんだ相手につけ込めるか、といった要素に分解できるはずだ。この点で準決勝は物足りなかったが、初戦の2回戦と準々決勝は悪くなかった。
ジュネーブ大会参戦で、自信回復はできたはず。
試合勘を、わかりやすく「自信」と意訳することもできるだろう。
2月の南米遠征から3月の北米転戦では実りが少なく、クレーコートシーズンでも十分な手応えがなかった。
身も蓋もない言い方をすれば、失った自信を回復させるためのジュネーブ大会参戦だった。
準々決勝のあとで「こういう試合に勝つことで、ちょっとずつ自信がつけばいい」と話した。準決勝で少し逆戻りしたにせよ、3試合を通しての収支はプラスだろう。