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錦織圭、ハッキリ見えた復調への道。
全仏の直前に取り戻した「試合勘」。
posted2017/05/29 11:55
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
AP/AFLO
「優勝するために来ている」と臨んだジュネーブオープンで、錦織圭は4強止まりだった。
初戦と準々決勝はまずまずの出来だったが、準決勝は歯車が狂ったまま終わってしまった。
対戦相手のミーシャ・ズベレフは積極的にネットを奪うスタイルで知られる(先日マスターズ1000でジョコビッチに勝って優勝したアレクサンダーの兄)。8強入りした今年の全豪オープンをご覧になった方は、サーブ&ボレーの切れ味をご記憶だろう。ところが、この試合では極端にポジションを下げ、守備重視の構えを取った。錦織の早いテンポの攻めを警戒し、後方に控えて時間を作ろうとしたのだろう。
これがピタリとはまった。
守備をこじ開けようと錦織が強打を連発しても、下がって守る相手には効果が上がらない。ドロップショットやネットプレー、角度をつけたストロークで揺さぶる策もあったはずだが、強打に頼る場面が目立ち、「工夫が足りなかった」と錦織は悔いた。
痛めていた右手首は「まだちょっと不安が」。
ズベレフは粘るだけではなかった。錦織のストロークをカウンターで切り返し、好機と見ればポジションを上げて攻めてきた。フラット気味のバックハンドと左利きのフォアもやっかいだった。
もともとボールを捕らえる感覚に優れているに違いない。予選から戦ってコートコンディションにも慣れたのか、プレーには自信が満ちていた。3セットで敗れた錦織は「うまくプレーされた」と脱帽した。
ただ、クレーコートで試合数をこなすという、参戦のもう1つの目的は、3試合を戦ったことで、そこそこ達せられたのではないか。
バルセロナ欠場とマドリード準々決勝棄権の原因となった右手首痛も、「まだちょっと不安はある」とは言うものの、症状は出ていない。4強の結果は不本意でも、四大大会の全仏への準備段階と考えれば及第点と言っていいのではないか。