錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
賭けとテニスの微妙な関係――。
錦織圭が全仏で優勝するオッズは?
posted2017/05/30 11:15
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
今になって、テニスにおける“賭け”の世界に関心なり好奇心なりを抱いた日本人も少なくないのではないだろうか。
日本選手の八百長関与によるテニス界からの永久追放という衝撃的な事件が報じられ、そんな下位の小さな大会で賭けが成立するのかと疑問に思う人がいるのも当然だろう。しかし、インターネットの普及の影響か、今や世界中のもっとも賞金規模の小さい大会の予選ですらオッズがずらりと並び、いつでもどこでも賭けに興ずることができる仕組みになっている。
こうした状況の下、昨年の全豪オープン前には大規模な八百長疑惑が報じられ、テニス界が揺れたこともあった。
あのとき錦織圭はこう話したものだ。
「僕自身はまったく関与もしてないですし、やろうと思うこと自体がまったく理解できない。スポーツ、特にテニスは1対1の本気の勝負。それをお客さんが、もし八百長があるかもしれないって感じて、そういう目で見られてしまったら、テニスだけでなくスポーツにとって大きなダメージになると思うので、もし本当にあるんだったらやめてほしい」
俯き加減で、怒りというより寂し気だったのが印象的だった。
それが、少なくともジュニア時代にはダブルスを組み、友人の1人といえる間柄だった選手の関与、しかも八百長の持ちかけという行動には、言葉もないだろう。
その選手、三橋淳もまた、10代の頃には早く錦織に追いつきたいと話し、デビスカップのメンバーになって日本のテニスを背負っていきたいと熱く語っていたことを思い出す。ジュニア時代から粒ぞろいと期待された国内の錦織世代の中でも、個性あふれる、観客を惹き付ける選手だった……。
錦織の試合も大手ブックメーカーでは大人気!
この件を受けて、全豪オープンなどのスポンサーであるブックメーカーの『ウィリアム・ヒル』のサイトを初めてじっくり見てみたのだが、その細かさに驚かされた。
そのときは、ちょうど錦織も出場していたジュネーブ・オープン(ATP250)の準々決勝のオッズが公開されていて、錦織勝利が3/10、つまり1.3倍で、対戦相手のケビン・アンダーソンの勝利が5/2、3.5倍となっていた。この試合の錦織に賭けられた総額が、あらゆる競技のあらゆる試合の中でもっとも多かった時間帯もあったが、そのときの人気トップ5は錦織以下4つ全てがヨーロッパのサッカーの試合だった。