ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
村田諒太の敗戦と判定を検証する。
実は亀田戦と同じジャッジが!?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2017/05/22 13:00
試合直後で判定に納得できない部分もあるだろうに、村田諒太はエンダムにも会見にも笑顔で対応した。心の容量はどうなっているのだろうか。
世界戦107戦を裁いた日本人レフェリーは?
しかし、2人のジャッジの判断は違った。
カナダのヒューバート・アール氏は115-112でエンダム。パナマのウスタボ・パディージャ氏は、さらに開いて116-111でエンダム。村田の大勝どころか、エンダムの明確な勝利だ。
これをどのように理解すればいいのか。世界戦107試合を裁いた日本を代表するレフェリーで、現在は引退している森田健氏は次にように解説した。
「どちらにつけていいかわからない微妙なラウンドがあるとき、とにかく手数が多いほうにつける、という審判はいますね。エンダム勝利の審判はそういう採点だと思いますよ。私の採点は2ポイント差で村田くんの勝ちでした」
パディージャ氏はベテラン審判員で、来日経験も豊富だ。近年では2014年大みそかに来日しており、三者三様のドロー判定となった河野公平(ワタナベ)とノルベルト・ヒメネス(ドミニカ共和国)のWBAスーパー・フライ級タイトルマッチでは、ヒメネスの勝利と採点した。内山高志(ワタナベ)がイスラエル・ぺレス(アルゼンチン)に9回終了TKO勝ちしたWBAスーパー・フェザー級戦では、他の2人が大差で内山リードとつけながら、9回までドローと採点している。
亀田対ランダエタでランダエタを支持していた。
'06年に亀田興毅が初めて世界王者となり、多くのファンが「亀田が負けていた!」と大騒動になったフアン・ランダエタ(ベネズエラ)とのWBAライト・フライ級王座決定戦でもジャッジを務め、このときはランダエタの勝ちと採点している。これらの試合を見ると、パディージャ氏は確かに手数の多いほうを支持する傾向はある。
いずれにせよ、これだけ地元選手に厳しい採点をしているということは、力量はさておき、強い信念を持っている審判員であるとはいえるだろう。
いずれにしても、2人の審判員はエンダムの勝利につけた。少なくとも2人にはそう見えたからだ。一度下されたジャッジは、明らかな見落とし(ノックアウト負けがゴング後の攻撃によるものだったと判明するなど)でない限り、決して覆らないし、覆るべきでもない。我々はこの事実を受け入れなければならないのだ。