ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
村田諒太の敗戦と判定を検証する。
実は亀田戦と同じジャッジが!?
posted2017/05/22 13:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
村田諒太の世界王座獲得ならず―─。
20日、有明コロシアムで行われたWBA世界ミドル級王座決定戦は、ロンドン五輪金メダリストでランキング2位の村田諒太(帝拳)が1位のアッサン・エンダム(フランス)に1-2の判定負け。
村田が4回にダウンを奪い、試合を優勢に進めているように見えただけに、村田陣営の怒りは収まらず、多くのメディアは「不可解判定」とジャッジを非難、WBA会長が異例の“謝罪声明”を発表するなど、騒ぎが広がった。
日本ボクシング史上2人目となる金メダリストが、日本人選手2人目となるミドル級世界王者を目指した一戦を検証する。
まずはさっと試合を振り返ってみよう。村田は立ち上がり、エンダムのパンチになれるためにあまり手を出さず、ディフェンスを重視したボクシングをした。エンダムはフットワークを使って動きながら盛んにジャブを出し、時折右ストレート、右アッパーを打ち込むボクシング。村田はこれをブロックしながら、少しずつ攻撃姿勢も高め、4回に得意の右でエンダムからダウンを奪った。
その後は、再び序盤戦と似たような内容となった。エンダムはよく動き、さまざまなパンチを村田に打ち込んだ。村田はエンダムの攻撃を防ぎ、時折放つパワフルな右でエンダムを押し込んだり、のけぞらせたりした。後半はやや停滞した展開になったものの、村田が終始押しているように見えた。
エンダムのパンチはほとんどヒットしていないが……。
3人のジャッジは、米国のラウル・カイズ・シニア氏が117-110で村田の大勝。私の目にも村田の大勝といって差し支えない内容に見え、妥当な採点に思えた。
エンダムにポイントを与えられない理由は、エンダムは手数で勝っていたとはいえ、ジャブや右ストレートが村田のブロックに阻まれ、ほとんどヒットしていないからだ。これがもう少し当たっていると、村田がパワフルにエンダムを押し込み、一見したところ優勢だったとしても「有効打はエンダム」ということはあるかもしれない。でも今回の試合はそうではなかった。