ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
スーパールーキーとはまだ呼ばない。
星野陸也が青木、尾崎組で見たもの。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2017/05/04 08:00
松山英樹がマスターズでローアマに輝いたのは19歳の時。20歳の星野陸也がスーパールーキーと呼ばれるためには、まず1勝を手にすることだ。
天然、現代っ子の一面も見せる一方で……。
同大会でキャディを務めたのは、かつて石川遼とコンビを組んだ加藤大幸さん。「飛距離はもちろんだけど、アイアンで言えばかなり器用なところがある。グリーンやピン位置によって、ボールを“吹かせたり”、曲げるのもうまい」と言った。
186cmの長身を持ちながら、まだヒョロっとした体型だ。弓のように体をしならせてショットを打つと、ズボンの下からポロシャツの裾がペロッと顔を出す。そんな小さなことは気にも留めず、長い時間をドライビングレンジで過ごす。練習を終えると、つい忘れ物をして、選手ロッカーの周りをウロウロ……。朝も宿舎の部屋とロビーとを何度も行き来することもあるという。
とはいえ「天然キャラ」とか「現代っ子」だとかの言葉で片付けるのも惜しい。一方で鋭い繊細さも感じさせるからだ。
0.2グラムのテープをクラブに貼り「全然違う!」
事前ラウンドでは、グリーンの傾斜を丁寧にメモに記して各ホールのイメージをつかむ。そして、キャディバッグには長年、自前の“工作キット”を忍ばせている。高校生の時、先輩が鉛のテープをクラブに貼り付けて重量調整しているのを見てから、古いクラブを自分なりにカスタマイズすることが習慣になった。
ゴルファーには珍しいことではないが、その調整が実に細かい。薄い鉛テープを約4ミリメートル四方に刻み、ウッドやパターのソールにペタリ。単純計算すれば、重くしたのは0.2グラム前後である。加藤キャディの「ゴミと間違えて取っちゃったらどうしよう……」という心配をよそに、「これだけで全然違うんですよ!」と無邪気に言う。テープを小さく切り刻むのは、眉毛やまつ毛を切るコスメ用のハサミだった。
AOとの同組ラウンドを終えた星野は、週末に順位を上げて24位で終えた。優勝争いとは無縁ながら、最終日はサラッと全選手のベストスコアとなった65をマークして愛車に乗り込み、地元・茨城までの帰路についた。