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ドラ1との捕手争い制した育成6位。
SB甲斐拓也はなぜ大出世したのか。 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byKyodo News

posted2017/05/04 07:00

ドラ1との捕手争い制した育成6位。SB甲斐拓也はなぜ大出世したのか。<Number Web> photograph by Kyodo News

年上の投手相手に気遣いを忘れず、根拠のあるリードを示す甲斐。捕手としての必要十分条件を満たしている。

帽子に、キャッチャーミットに刻む「人はヒト」。

 2人は常に比較対象にされた。周囲から好奇の視線を送られたこともあった。

 そんなある日、甲斐は帽子のツバの裏側に、太めの黒のペンでこう書きこんだ。

「人はヒト」

 現在も帽子には毎年ペンを走らせる。当時、使用していたキャッチャーミットにも同様の刺繍を入れてもらった。

「僕は自分のできることをやるだけ。他人のことを気にしても仕方ないですから」

 3年目のシーズンオフ、育成枠から支配下登録を勝ち取った頃から甲斐の顔つきが変わったと記憶している。温和な表情そのままに穏やかな性格だったのが、ただ優しいだけの男ではなく、内に秘める闘争心がビシビシと伝わるようになってきた。

 何とも表現が難しいが、なんだか武骨で、プロ野球選手らしくなったと感じさせられた。

「家に帰ってもほとんど野球のことを考えています」

「キャッチャーとして試合に臨む意識などは、二軍の公式戦に出させてもらうようになった頃から変わってきました。今、一軍の森(浩之)コーチや清水(将海)コーチがファームの担当だった頃からたくさん指導していただきましたし。気づいたことをノートに書くようになったのもこの頃からですね」

 とにかく練習の虫だった。キャンプもシーズン中も休日返上が常である。その姿勢は今もそのままだ。

「周りからは『すごいね』などと言われますが、僕にとってはいたって普通のこと。やるべきことがあるからやるだけです。家に帰ってもほとんど野球のことを考えています。テレビも見ません。タブレットでバッターの研究をしています。翌日対戦するチームもそうですけど、次のカード、そのまた次のカードの対戦チームまで見ますね」

【次ページ】 千賀、東浜と組む中で築き上げている信頼関係。

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