野球のぼせもんBACK NUMBER
ドラ1との捕手争い制した育成6位。
SB甲斐拓也はなぜ大出世したのか。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2017/05/04 07:00
年上の投手相手に気遣いを忘れず、根拠のあるリードを示す甲斐。捕手としての必要十分条件を満たしている。
打撃は「デッドボールでもいいから出塁して……」。
また、課題とされた打撃でも奮闘している。4月は25打数8安打で打率.320をマーク。得点圏でも7打数3安打で2打点を挙げている。
打席ではベース際のラインぎりぎりに立つ。そして上半身をベースに覆い被せる様にして構える。
「当たってもいいと思ってますよ。デッドボールでもいいから出塁して、上位につなげるのが僕の仕事です。それに相手も嫌でしょう」
最近では地元テレビなどからの取材もかなり増えてきた。
「まだまだですよ。緊張だって変わらずしますし、自分がやるべきことはたくさんあります」
ホークスの「ウサギとカメ」の物語。カメだった甲斐は、今はもう、脱兎の勢いで経験値を積んでいる。
だけどこの世界、安泰などない。立ち止ればライバルたちに食われてしまう。今は二軍でくすぶる山下(登録名・斐紹)もこのまま黙っているはずがない。今季はウエスタンの打撃10傑にずっと名前を連ねるアピールを続けている。若手捕手も次々と入団してくる。今年のルーキーには、昨年の甲子園で春夏連続ベスト4の秀岳館高校出身の九鬼隆平がいる。
いつまでも走り続けるウサギでなければ、プロ野球で真のレギュラーとなることは決して出来ないのだ。