野球のぼせもんBACK NUMBER
ドラ1との捕手争い制した育成6位。
SB甲斐拓也はなぜ大出世したのか。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2017/05/04 07:00
年上の投手相手に気遣いを忘れず、根拠のあるリードを示す甲斐。捕手としての必要十分条件を満たしている。
千賀、東浜と組む中で築き上げている信頼関係。
プロ7年目を迎えた今シーズン。開幕3戦目の4月2日、自身プロ初スタメンを飾った。この試合では東浜巨とバッテリーを組んだ。
今季序盤のホークスは、千賀と東浜が先発登板する試合では甲斐が女房役を務めるというのが、チームの決まりごとになっている。「若い者同士の方がコミュニケーションを取りやすいだろう」という首脳陣の計らいだ。
とはいえ、もちろん結果を残さなければ生き残れない世界だ。4月末時点で千賀は3勝1敗。黒星スタートだったが、その後3連勝。しかも3試合連続二桁奪三振のオマケつきだ。そして東浜も2勝1敗、防御率2.84と安定感を見せている。
特に千賀とのコンビが興味深い。
千賀の代名詞といえば、打者の視界からボールが突然消える「お化けフォーク」だ。しかし、ここまでのピッチングを見ているとフォークボールの割合は意外と少ない。変化球ではスライダーを多用している。
甲斐の読みが鋭いのだ。
打者が「お化けフォーク」を意識した瞬間が分かる?
打者の意識は明らかにフォークにある。それをうまく利用して、違う球種で抑えている。そして打者が混乱し始めた頃に上手くフォークを織り交ぜるのだ。
「拓也のリードには助けられています。同級生だし、試合中も試合が終わってからもよく話はします。拓也が言うには、打者がフォークを意識しているのが分かる時があるらしいんです。そこでうまく配球してくれる。僕はマウンドから必死に投げるだけなので、なかなか気づけない。本当にありがたいですよ」(千賀)
配球は難しい。本当の正解などないのかもしれない。
「それでも、拓也はなぜそのボールを選択したのか、いつも説明をしてくれる。だから僕は拓也のリードを信頼してマウンドに立つことが出来ているんです」(同)