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「WBC後遺症」の議論に意味はない。
秋山も、筒香も、誠也も、大丈夫だ。

posted2017/05/05 07:00

 
「WBC後遺症」の議論に意味はない。秋山も、筒香も、誠也も、大丈夫だ。<Number Web> photograph by Kyodo News

筒香嘉智は、日本プロ球界でも珍しいスタイルでバッティングと向き合う打者である。不調との向き合い方も、ひと味違うのだ。

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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 その質問をしたときの彼らの反応は、決していいものではなかった。

 彼ら――。シーズン開幕直前までワールドベースボールクラシック(WBC)に出場していた男たちが、調子が上がらない遠因を一方的に決めつけたような質問に快く応えられるはずはなかった。

「この手の質問をいい意味で捉えることってほとんどできないと思います。時差ボケに始まり、ボールの対応……とか、何十回も聞かれるわけじゃないですか。自分には取り組んでいることがあるのに、(WBC後遺症なのかと)言われ続ければ、本当にそうなのかなと思っちゃいますからね」

 西武の秋山翔吾にWBCの影響について尋ねると、返ってきたのはそんな言葉だった。

 シーズンが始まってまだ1カ月にも満たない彼らにとって、いまひとつパフォーマンスを発揮できない原因が「WBCの影響か」という質問を投げられるのは、想像以上に不愉快なことだったのかもしれない。

筒香には、昨年以上に逆方向への意識が見える。

 秋山のほかにも、筒香嘉智や鈴木誠也は調子を崩していた。いまでは山田哲人がその渦中にいるが、彼らの試合でのパフォーマンスを見るたびに感じられたのは、バッターとしての技術に対するあくなき探求心だ。

 例えば、今シーズンの初本塁打が生まれるまでに92打席を要したことで騒がれた筒香嘉智。今年の彼のバッティングには、昨年以上に逆方向への意識がみえる。4月12日の阪神戦では、第1打席と2打席目、阪神の先発・秋山拓巳が投じたインコースのボールをレフト前に運ぶ高等技術で安打にしていた。

 もともと筒香は試合前のバッティング練習でも、ぶんぶんと振り回すようなスタイルを採り入れていない。コースに合った自分の打ち方を編み出し、調整する。ケージに入ると、まずは三塁線の方向を目指してスイングしていき、徐々に中に寄せていき、引っ張っていく。締めくくりにコースに合わせてフルスイングして広角に打球を飛ばしていく。

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